© 中村 航 Wataru Nakamura

SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary インプレッション

望遠撮影に魅せられた人々に、第一選択として欲しい100-400mmという焦点域。

望遠ズームを選ぶ際、まずは70-200mm、70-300mm、この2本が候補に上がることが多い。前者は明確な目的があり、後者はまず「持っておく」という選び方だろう。それ以外の焦点域を選ぶ場合は70-200mm F2.8のように、やはり明確な目的に沿った選択だろう。70-300mmというズームは望遠ズームの入口にあり、各社がしのぎを削る。そして実に素晴らしいレンズが多いのだ。ワイド端が70mmであることを考えると、寄り気味のポートレートから、一般的な望遠ニーズまでを満たす、いわば万能の望遠ズームである。今回リリースされた SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary は、望遠の画に魅せられて一歩先の撮影を望む人にうってつけのレンズなのだろうと想像する。ちょうど70-300mmが全域望遠側に少しだけシフト。この少しの差が、実は大きい。

望遠側へのシフトで、踏み入れられる世界が増える。

300mmあたりまでの焦点距離で、実は大半の望遠撮影はこなせる。だが、そこからズーム環を「あともう少し」回したくなることが多い。広角を用いるイメージの風景撮影も実は望遠の方が出番が多く、テレ端は400mm程度が望ましい。子供を撮影する際に望遠を用いるシーンでは寄れないことが大半であり、400mm程度であれば画面いっぱいに捉えられる。スポーツ撮影なども、草野球のように選手との距離を縮めやすい場合を除き、やはり400mm程度が欲しくなる。本レンズを手渡されたときに、うまくニーズの間を縫ったなと感じさせられた。70-300mmクラスに比べれば多少サイズは大きくなるが、手持ちで撮影できる大きさ・重さ。本テストでは、望遠が欲しくなる典型的なシーンに持ち出してみた。参考としていただければ幸いである。

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© 中村 航 Wataru Nakamura

風景の中での「あと一歩」

広大な光景の中で車を走らせ、目にとまったところでカメラを構える。よほど練り込んだ撮影でないかぎり、風景撮影とはこんなものだろう。目に止まった景色を見つめる画角は、感覚的におおよそ300mm程度ではないだろうか(もちろん場の広さによる)。そこから自分なりのスタンスに基づいてフレーミングを行うわけだが、100mm程度切り詰める”のり代”は欲しい。筆者が風景撮影にテレ端は400mm程度であって欲しいと感じるのはこのあたりから。もちろん300mmでのフレーミングも可能だ。だが風景という距離感の中で、そこから「あと一歩」をくれるのが、100-400mmだ。

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なだらかな丘を覆い尽くす雪。雲の切れ間から差し込む光が、まるで筆が走るかのうように稜線を描く。このシーンは3分と続かなかった。風景撮影といえば、三脚にカメラを据えて光景と対峙するイメージかもしれない。もちろんそんな撮影もあるのだが実は同じ景色はそう続かず、シャッターチャンスを追いかけることの方が多い。手ブレ補正OS機構が搭載されていることはとてもありがたい。平坦な画となるため、周辺の光量の低下を逆に利用させて貰った。

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あたりは一気に吹雪き始め、その模様を写し止めるために黒いバックを探す。一戸の廃屋が目に止まり、引き寄せた。ピント位置は廃屋、廃屋までの降りしきる雪の輪郭まで写し止めるとなると、F16程度まで絞り込みたい。ISO 400でも、手ブレ目安のシャッター速度:焦点距離を割り込む。ましてボディは5000万画素オーバー。止まるか不安だったが、手ブレ補正OS機構はよい仕事をしてくれた。

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25km以上の遠景を望む。400mmで引き寄せるフレーミングであれば、空気の揺らぎを写し込むことになる。ここまで写し込んでくれるのであれば上々だ。

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獣の足跡に目がとまり、その足取りの雰囲気を表現しようと考えた。あえて絞り開放とし、木々の影を柔らかく捉える。気温も日中はプラスとなり、雪も少しずつ溶け始める。若干ダマになりつつある雪面を事細かに解像するのには恐れ入った。フィルム時代ならまず写らなかったものだ。

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3月も中旬となれば、もう春の足音が聞こえる頃だ。しかし撮影地の早朝は未だにマイナス13度といった気温。あまり期待していなかったのだが、日の出とともに空が一気に染まりだした。雲の形が面白い。並木をフレームするのは実は難しく、天地方向の入れ具合はともかく、横方向はどこまで入れて、どこで切るか。単焦点レンズであれば、シャッター速度も稼げるし、描写もさらに切れるかもしれない。しかし画角の制約は、ずっしりと重い足枷となる。焦点域を考えればコンパクトで軽量な本レンズは、風景撮影の強い味方になってくれた。

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サーキットに持ち込む

富士スピードウェイにレンズを持ち込んでみる。ポルシェ911GT3 Cupのワンメイクで行われるレース、ポルシェカレラカップのシーズン前合同テストが行われていた。国際格式のサーキットでは観客席からコースが遠く、400mmクラスであると車両を大きく捉えることは難しい。それにも関わらず、100-400mmという焦点域のレンズを愛用するプロや愛好家が多いように感じる。その理由は100mmからズームが効くこと。レース車両だけではなく、周りの光景まで写し込むのに重宝するからだ。それに拡大率を稼ぐにはAPS-C機をあてがえばよい。サーキットにおいて、100-400mmという焦点域のレンズはありがたい存在だ。

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クロップなしの正味400mmの画角であれば、アップ以外の表現を必然的に考えることになる。ポルシェ911という車両の特長は、車両の後ろにエンジンが搭載されていること。それ故に後輪に強大な荷重が掛かりコーナー出口で猛然と加速していく様は、まるで空母から離陸する戦闘機のようだ。尻をぐっと沈め、ブラックマークを残しつつ加速していく姿に震える。

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一脚なしの手持ち撮影のため、少しだけ流してみる。手ブレ補正OS機構にスポーツモードが存在するが、車両がさほど上下動しないため、通常モードで撮影してもまったく問題なかった。モードを切り替えてみると、たしかに歩留まりが上がる。

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止める場合にはAF、流す場合はMFで撮影することが多い。カレラカップの車両はブレーキバランスをドライバーが自分で調整し、ABSも搭載されない。合同テストということもあり様々なトライをしていたのか、ブレーキロックを起こす車両も多かった。コーナー進入からAFで追いかけていたが、レンズを振ろうとする方向とは違うラインに車が進む。その間、ボディとのAF連携そして手ブレ補正OS機構も違和感無くシンクロし、きちんと捉えてくれた。

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レース開催日ではないので、パドック裏から望遠でシーン撮影も狙えた。100-400mmというズーム故にレンズ交換なしにこんな撮影も可能となる。単焦点にしか撮れない画もあるのだが、やはりありがたいのだ。

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サーキットでの被写体に対する距離感は、おそらくどんなスポーツにおいてもさほど変わりがないだろう。本格的な撮影に存分に応えてくれるレンズだと感じる。

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望遠ズーム最初の1本、いま手持ちの望遠群の隙間を縫う1本として

70-300mmのようなレンズと比べれば少し大きく重いが、むしろテレ端が伸びるメリットが大きい。コンパクトさを最重要視するのでなければ、望遠撮影が楽しくなった「次」を見据えて、最初から本レンズをチョイスするのもよいだろう。望遠群をすでに持っている場合、この1本を付け加えるとかなり重宝すると思われる。最後に日常的なスナップ・フィールドで撮影してみる。手持ち、低光量、窓越しなど、スナップは咄嗟の撮影が大半で、悪条件が重なることが多い。しかし日頃捕まえるのが難しい距離を捉えるのは面白い。こんな使い方も可能だという参考にしていただければ幸いである。

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