© 是永 悟 Satoru Korenaga

SIGMA 500mm F4 DG OS HSM | Sports インプレッション

超望遠・単焦点の花形、“ゴーヨン”
新プロダクトラインからのリリース。

「これは自分でも手に入れたいと思っています。自信作です」
日頃飛行機の撮影を楽しんでいるというシグマの担当者が嬉々とした表情でレンズを渡してくれた。手にしてみると、ともかく軽い。鏡銅はマグネシウム、フードはカーボンと、マテリアルも贅沢だ。Sportsラインの“フラッグシップ”と謳って登場するレンズだ。写りは間違いないだろう。なにより、日頃から自社レンズなんて見飽きてるであろう担当者のきらきらした目が、否が応でも期待させてくれる。いろいろな捉え方があるだろうが、超望遠・単焦点で一番使いでのある焦点距離は500mmだろうと思う。特定の用途でなければ、300mmや400mmにテレコンバーターを併用して500mm近くで使うことが多いだろう。“ゴーヨン”は、何時だって手元にあればと思う1本である。

フラッグシップの要件を満たしているか。
テストの興味はその一点に尽きる。

“フラッグシップ”とはなにか。比類なき高性能。そういう言葉がまず頭に思い浮かぶ。担当者にプライスを聞いて、意外な印象を受けた。これまでシグマのプライシングといえば、各社カメラメーカーによる同スペックのレンズの約半額といった印象だった。相当に詰めこんできたレンズなのだろう。しかし、性能だけではないものがフラッグシップには求められると思う。撮影現場で、その性能をいかんなく発揮させることのできる道具として成立しているか。総合的に見て、メーカーの威信を背負い、それを体現しているか。これらも大事な要素だろう。しかし陳腐な表現だが、要は夢を見せてくれるか、ではないだろうか。その画で、ひとつ上のステージを見せ、次の撮影に撮り手を駆り立てる。フラッグシップには、そんな器量を見せて欲しい。さて、そんな1本足りうるか。サンプルで検証してみたい。

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© 是永 悟 Satoru Korenaga

連綿と流れる時を写しとめる力

撮るのではなく、視る。選手達のダイナミックなモーション、表情、醸し出す雰囲気、その場を包んでいた空気、人はその一連を流れとして記憶にとどめる。写真でいう「決定的な1カット」の瞬間に立ち会ったとしよう。「視る」とは、その「決定的な1カット」とやらの前後まで、いろいろなものを加味していることだろう。そんなものと比べられると、写真で叶えられることなどたかがしれたものだ。その中でレンズはどんな役割を果たすべきなのか。少なくともフレームの中に写しこまれたもの以外に目がいくようでは困る。限りなく明瞭(シャープ)で、真っ直ぐが真っ直ぐに写り、透き通った空気、霞んだ空気、それらをリニアに写しとめる根源的な性能の高さが、まず必要なのだろうと思う。その点、これは文句のないレンズではないだろうか。開放から圧倒的な解像力を誇り、収差というものがまったく感じられない。スムーズで美しいぼけ味。瞬間を写しとめたそのカットに「時の流れ」が感じられる。

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すばらしい解像力だ。ぜひ原寸サイズで見て欲しい。収差が微塵も感じられないため、被写体が浮き彫りとなる。秋口独特の光、温度、それもリニアに写しとめる。これはファインダーを覗くだけでも興奮する。

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しっとりとして、密度のある空気もよく捉えられている。これも秋口の空気だ。
従来の類似モデル(SIGMA APO 500mm F4.5 EX DG HSM)を思えば、比喩や誇張ではなく、本当に手持ちで振り回せる重量とバランスもありがたい。

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その場で感じたことを1カットとして定着させるために、撮影者に寄り添い、力を貸してくれるレンズだ。
この一致させる難しさが、写真の難しさにつながることが多い。これまで写せなかったものを写せるように。エンジニアリングの一つの解であると思う。

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クローズアップする力

遠くを引き寄せる、被写体を浮き立たせて大胆に画面整理を行う。500mm F4は、なにもスポーツシーンを捉えるだけのものではない。撮り手の中にあるものを含めて、“引き寄せたいもの”を写し込むのに使えばよい。シャープな像に、美しく大きなぼけ味、豊富な階調再現が、なだらかさと高いコントラストを同居させる。超望遠独特の世界に、胸が躍る。ちなみに、上のカットのシャッタースピードは1/30。止まるはずはないだろうと思った。案の定、僅かにブレているが、それにしても手ブレ補正機構の力を感じるし、このレンズのフィールドは思いの外広いと感じる。

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期待に応える力

SIGMA APO 500mm F4.5 EX DG HSMもよく写るレンズだ。ただ開放F値を見て、無理にスペックを追うのではなく、コストパフォーマンスとのバランスも考えられたレンズなのだろうと思う。それに対して本レンズは一切の妥協を排し、SIGMAのすべてを注ぎ込んだレンズであることはテストでよくわかった。操作性もよく練り込まれているし、手ブレ補正機構のキレも素晴らしく、実際によく止まる。それでも他社のレンズよりは価格が抑えられている。唯一、これは妥協と言うようなものではないと思うが、昔からのSIGMAらしさをと考慮されたのだろう。“ゴーヨン”を手にする人々は、レンズの向け先が明確だ。本インプレッションで、できるかぎり思いつく被写体を追いかけてみた。チョイスの参考になれば幸いである。そして、ぜひ手にして欲しい1本だ。

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