+ fp あなたはfpで何を撮りますか?

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  • Produce: Yoshinao Yamada
  • Photo: Hiroshi Iwasaki
  • Video: DRAWING AND MANUAL

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安藤 剛 Go Ando

UX デザイナー UX Designer “写真とか映像というのは、体験を共有するのに
すごく有効なメディアだと思っています”

UXデザイナーという仕事をしています
安藤剛と申します。UXデザイナーという仕事をしています。UXというのはユーザー体験、例えば企業の提供するプロダクトやサービスというものを、まずは人がどのように知り、実際手にして、どういう体験を得るかをデザインする仕事です。私が今一番大きく関わっているのはYAMAPというアウトドアのデジタルサービスで、このサービスのユーザー体験の責任者を務めております。つまり、YAMAPと、YAMAPを使っている人、YAMAPをこれから使う人にとってのあらゆる接点のデザインを監修する立場になります。

自然の中にいることの気持ちよさに気が付いた原体験
もともと若い頃から山にスノーボードをしに行ったり、海にサーフィンをしに行ったりしていたので、アウトドアは好きなほうだったんですが、5年前にアイスランドを旅行したときに、いくつもあるトレッキングルートに旅の途中で立ち寄ったんですね。ほんとに何の装備もなかったので1時間程度ちょっとぷらっと歩いた程度だったんですが、このときが自然の中にいることの気持ちよさに気が付いた原体験でした。帰国後、登山というアクティビティーが気になりだして、自分でいろいろ調べながら登山を始めたのがきっかけです。

写真は自分の記憶をピン留めしておくようなもの
カメラは20歳ぐらいのときからいろんなものをとっかえひっかえ使っていました。はまり始めたきっかけは、大学生の頃に卒業旅行でアメリカを1カ月かけて横断した時でしょうか。ロサンゼルスからニューヨークへ向かう行程で、グランドキャニオンへ移動するときに車上荒らしに遭って荷物が全てなくなるということが起きて。その2日間で撮っていた写真が全てなくなってしまったんですよね。その旅行を数カ月後に振り返ったとき、「失われた最初の2日間」の記憶が何も残っていなかった。やっぱり記憶っていうのは、写真がないとどんどん薄れていってしまう。写真っていうのは自分の記憶をピン留めしておくようなものだと思っていて。そのときにカメラの価値というか、写真を残すことの価値に気付いたっていうのがきっかけですね。

山で写真を撮るのは心が動いたとき、この風景を記憶に残したいと思ったとき
今、山に持っていってるのはfpと、あとはDJIのOsmo Pocketです。今はスチル写真を残すことのほうが多いので大半はfpで撮るんですが、たまに動きながら画を収めたいときに、スタビライザーがすごく利いているOsmo Pocketを使う感じですね。私は割と撮りたいものが見つかったらその場で足を止めてしまうほうで。やっぱり、そのせいで行程が予定よりも遅れるっていうことはあります。で、結構困るのが、写真を全く撮らない人と一緒に登ると置いてかれるという……(笑)

APS-Cとフルサイズの間で揺れ動いていたときにちょうどfpが発売に
私は10年ぐらい前から一眼レフカメラを使い始めて、割と小型で持ち運びやすいものと大型でハイスペックなものを何度も行ったり来たりしていて。で、経験を通じて、自分は小さくて持ち運びやすいことをすごく重要視していることに気付いたんですね。なのでfpを使う前は、SONY α6500が非常にコンパクトで山にも持っていきやすかったんです。それまではSONY α7Ⅲを買って使っていたんですが、それを3カ月ぐらいで手放してしまいまして。というのも、あれだけ優れた機種なのに、もう重くてちょっと常に携行しきれなくて、結局使わなくなってしまったんです。で、APS-Cのα6500を使い続けていました。
その一方で、持ち運びやすいものを使いたいんですが、やっぱり画としては高精細なものが撮りたいということで、そのAPS-Cとフルサイズの間で揺れ動いていたときにちょうどfpが発売になって、すぐに興味を引かれました。

一番驚いたのは、やっぱりカメラとしてのいい意味での存在感の薄さ
画作りとしてはもちろんすごくきれいに撮れるんですが、一番驚いたのは、やっぱりカメラとしての、いい意味での存在感の薄さというところです。市場にあるフルサイズのカメラっていうのは大概もっと大型で、人に向けたときに何らかの威圧感を与えるような存在感を持ってると思うんです。それと比較してfpは、スペックに比してだいぶ存在感が薄まっていると思っていて。それって、自分が撮ろうとしている、相手とのコミュニケーションにも関わってくるということが実際使ってみて気付いた点ですね。

写真とか映像というのは、体験を共有するのにすごく有効なメディア
UXデザインという仕事上、デザインの対象となるのはデジタルのインターフェースだけにとどまりません。リアルな世界で人々がどういう動きをしているのか、どういう体験を与えたいのか、というところまでデザインしなければいけないんですね。なので、なるべく日常の風景を多く切り取るようにしていまして、いつもカメラを持ち歩いて撮っています。で、それを資料としてチーム内で共有したり。あとは、私自身がソーシャルネットワーク上で割と活発に活動していて、YAMAPというサービスのソーシャルへの発信に力を入れているものですから、そうした用途でも「写真」というメディアすごく重視していますね。今、ソーシャルネットワークとそのインフラの進化によって、かつてないほど体験の共有というものが簡単になってきています。そうした中で、写真とか映像というのは、体験を共有するのにすごく有効なメディアだと思っています。
私がfpを使ってみてほしいのは、普段からソーシャルネットワーク上で自分の活動なりを発信している方ですね。いつも持ち歩いてもらって、fpを使ってスマホでは切り取れない日常の美しさというものを表現してもらえたらなと思っています。

なるべく構図の中に人を入れて、その空間のスケール感が伝わる画作りを
私自身は自分が写真がうまいとは少しも思っていないんですよね。アウトドアサービスに関わっている立場から、なるべく自然のなかに赴いて風景を写真に収めようとしてるんですが、結構私が意識しているのは、なるべく構図の中に人を入れて、その空間のスケール感が伝わる画作りをするということですね。山岳写真家の方の写真ってあんまり人が写り込んでいなくて、自然そのものを1枚の写真に収めてる方が多いと思うんですが、私はどちらかというと体験の共有っていう目的が強いので。

用途が違っても「身の回りに置きたくなるようなもの選び」は重視しています
私はあまり仕事とプライベートの境がない生活をしているので、道具選びも仕事用とかプライベートとかの境界はないんですが、やはり用途が違っても「身の回りに置きたくなるようなもの選び」は重視していますね。デスクワークをしているときでも、カメラは傍らに置いてあるぐらいなので、「プロダクトとしての美しさ」とか「佇まい」というところはすごく重視しています。その点でもfpというプロダクトはすごく気に入っています。
たまに3Dプリンターで物を作ったりするんですけど、それを使って自分用のグリップを作ろうとしています。カメラ筐体がここまでシンプルで追い込まれたデザインなので、自分の手に合って、すごくミニマルなグリップを自作してみたいなと思って、今3Dモデリングをしています。せっかくSIGMAさんがfpの3Dモデルを公開してくれているし、みんなが好きなもの作ったら面白いだろうなと思って。

すごく道具としての「透明感」を感じます
最近買ったギアはpeak designのTravel Tripodです。カメラ周辺アクセサリーとしてはpeak designのものを多く使っているんですが、やっぱりフィールドでの実用性を強く意識されていることがプロダクトから感じ取れます。そこが気に入っていますね。あまり自覚したことはなかったんですが、fpだけでなくpeak designなども含めて、何か「プロダクトのキュレーター」のような感じになってきてますね(笑)
個人的には、「ノイズ」がないものを好んで使います。メーカーのロゴがでかでかと書いてあるとか、本来の機能と関係ない装飾的なデザインなどのことなんですが、なるべくそういうものを避けるようにしています。例えばアウトドア・ウェアでも、ロコがでかでかと胸や背中に入ってるものが多いけれど、そういうものはあまり好まないです。例えば、ポートレート撮影の現場なんかで、ロゴをわざわざテープを貼って隠す写真家の方って結構多いと思うんですが、あれってやっぱり、人を撮影するというプロセスにおいてノイズになってしまってるからなんですよね。その点でfpで一番感心したのは、SIGMAのロゴが前面に入っていなくて、なおかつ握ったときには「fp」さえも掌で隠れてしまうというところでした。すごく道具としての「透明感」を感じますね。


安藤 剛

UX デザイナー

THE GUILD共同創業者、YAMAP CXO。
2012年にMobile and Designを創業し、モバイルアプリを中心に企画・制作・コンサルティング・映像制作等の領域で活動する。
13年にクリエイティブ・ファームTHE GUILDを共同で創業。19年、登山プラットフォームサービスYAMAPのCXO(最高体験責任者)に就任。
共著に「UI GRAPHICS 成功事例と思想から学ぶ、これからのインターフェースデザインとUX」<ビー・エヌ・エヌ新社>など。

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