+ fp あなたはfpで何を撮りますか?

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  • Produce: Yoshinao Yamada
  • Photo: Hiroshi Iwasaki
  • Video: DRAWING AND MANUAL

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角尾 舞 Mai Tsunoo

デザインライター / キュレーター Design writer / Curator “「既にある世界を切り取る仕事」
をしているんですけれども、
その点で写真のような文章を
書きたいなってよく思っているんです”

自分の仕事をデザインライターとキュレーターと言っています
最近は自分の仕事をデザインライターとキュレーターと言っています。もともとは山中俊治さんというデザインエンジニアのもとでアシスタントの仕事をしてたんですけれども、1年間スコットランドに行ったのをきっかけに、彼の職場を離れたんです。その後、雑誌などで記事を書くようになって、帰国後は結局、ほとんど成り行きでフリーランスとして働き始めました。今はそれに加えて展示会の企画やPRの企画、制作物のディレクションなどもしています。最終的には自分で文章を書くとしても、グラフィックデザイナーや写真家の方々とのチームづくりから始めるような、クリエイティブディレクション的な仕事をすることもあります。

デザイナーの言葉を、ある種代弁するような仕事ってあり得るんじゃないか
文章を書くのはずっと好きだったんですけれども、こういう仕事に就くとは思っていなくて。どちらかというとデザインの仕事をするのかなと思っていたんです。山中俊治さんのところでいろんなデザイナーの方とお会いするにつれ、「自分でものはつくるけど、書くこととか伝えることをする人って意外と少ないんだな」と思うようになって。じゃあデザイナーの言葉を、ある種代弁するような仕事ってあり得るんじゃないかなっていうのを途中から考えるようになりました。

取材する時間、自分にとってはものすごく幸せな時間ですね
私自身の仕事において、取材ってすごく大きな部分を占めているんです。言葉のやりとり、ある種のインプロビゼーションみたいなところがあるなと思っています。即興性があって、ライブ感のある言葉のやりとりっていうこと自体にすごくワクワクするし、そういう時間はとても幸福だなと思います。取材する時間、自分にとってはものすごく幸せな時間ですね。第一線で活躍する方だったりとか、とても才能のある若い方だったりとか、そういう方にお話を伺えることが、自分自身のやりがいであることは確かですね。

ちょっと見慣れない光景を写真に撮るのはすごく好きで
去年の秋に上海に行ったんですけれども、そのときは上海の街並みの中で洗濯物がすごく印象的でした。街のほんとに細い路地の外壁のすぐそばに洗濯物が掛かっていたりとか、道端に自分で物干しざおみたいので吊るしていたりとか。東京とかの街並みだと、なるべく洗濯物とかって隠すようにしてる気がするんですけれども、上海は全然そういうことがなくって、それがとてもかわいく見えたんですよね。プライベートでは、何かそういう、ちょっと見慣れない光景を写真に撮るのはすごく好きです。日本だと見慣れてしまってる光景ばっかりなんですけど、特に海外に行ったときには、街で見掛けた少し不思議な光景を集めるのがちょっと趣味みたいな感じで好きなんですよね。

『予定外だからこそ出会えるもの』みたいなことはいつも大事にしています
予定外、大好きなんですよね。フライトなどの予定はしっかり詰めるんですけど、それ以外の部分はなるべく自由にしたくって。旅先ではアンティークショップを探すのがすごく好きで、なるべくその土地ならではの古道具を見つけて持って帰るのが趣味の一つです。例えばミラノサローネの取材に行ったときは、最終日の日曜日、街はもうどこも混んでいるから、1時間半ぐらい離れたトリノに行きました。ちょうど月に1回だけやっている、蚤の市が立つと知ったので電車で向かったんですが、やっぱり日本のアンティークショップなんかとは違うイタリアらしい雑然さがあって。その時は古い1930年代の直火式エスプレッソメーカーを購入しました。「予定外だからこそ出会えるもの」はいつも大事にしています。何年たっても記憶に残る光景ってそういうもので、私の場合は、それをずっと写真に撮り続けている感じです。記録し続けるというより、文章で残したり日記のような形で残したりっていうことをしていますね。

自分が見えてない解像度でものを見、人の表情を見ている
写真家の方って、やっぱり言語を使わないで伝えるのがすごいなと思っています。特に被写体への尊敬とか愛に近いものを感じる写真家の方とお仕事するのは、とても高揚感があります。やっぱりスナップであれ、物撮であれ、例えば”人の表情を撮るのが好き”、”もののディテールをかっこよく撮るのが好き”といったような、その方それぞれのこだわりと、そこから培われた腕前にほれぼれするというか。
自分が見えてない解像度でものを見、人の表情を見ている。その瞬間瞬間を反射神経的に撮る場に立ち会えること自体が嬉しいんですよね。それは取材相手の言葉をもらうときにも近い感覚なのかもしれないです。なのでディレクションっていうとちょっとおこがましい部分もあるんですけれども、一緒にお仕事させていただくチームの方々と、同じ「ものを伝える」という文脈において、同じような熱量で被写体や伝える相手に向き合ってくださる方と一緒にお仕事できるのは幸せですよね。

まずプロダクトとして圧倒的に美しいカメラだなと思っていて
fp、まずプロダクトとして圧倒的に美しいカメラだなと思っていて。いわゆるコンデジとはやっぱり違うけれども、これまでの一眼レフともまた違う、新しい存在感のあるカメラだなと。このボタンの平面に収まるけれども、ちょこっとだけ出る感じとか、めちゃくちゃかわいいくてすごく気に入っています。フラットなのに単調じゃないというか。直方体の塊感がありつつ、無機質すぎなくて丸みもあって、かといってかわいくなり過ぎないところのバランスは絶妙です。UIも直感的で分かりやすい。私はそんなにカメラは詳しくないからこそ簡単に撮れることってすごく大事だと思うんですが、ピントを合わせる、F値や露出を変える、そういうところは悩まずにできましたし。撮った写真はボケがものすごく綺麗なんですが、これからはパキッと焦点を合わせても撮ってみたいし、取材のときにどうしても人を撮らなきゃいけないときなんかには使いやすいかなと思っています。

fpは、撮られる人から見てもちょうどいい塩梅だなと思うんです
ほんとはそれぞれの職能、プロフェッショナルってあると思っているので、できれば写真の仕事はそれを本職とする方に撮ってもらいたいんですけど、どうしてもカメラマンさんが同行できないとき、最終的に記事に使用する写真も撮らなきゃいけないことがあります。そういう時、カメラを向けられた側に立ってみても、スマートフォンだとやっぱり「何だ、スマホか……」って思っちゃうと思うんですよね。だからといって、ごつごつの一眼レフだと、「この人すっごくいい写真を撮ってくれるのかな」って期待させすぎちゃう(笑)。fpは、撮られる人から見てもちょうどいい塩梅だなと。やっぱり、素人がそれなりに使える写真を撮ろうとするなら、良いカメラを使うのが一番だと思うんですよね。何かカメラには申し訳ないけれども、相応にかっこいい写真が撮れる、そういうのにはすごく向いてるカメラだなと思います。

『写真のような文章』を書きたい
すごく抽象的な話になっちゃうんですけど……写真ってすごく比喩としても面白いなと思っていて。カメラって、既にある世界を切り取るツールの一つじゃないですか。取材も、あるいはレポートを書くことも、それに似た部分があると思うんですよね。私は、自分で新しく創作する小説や詩とは違って、「既にある世界を切り取る仕事」をしているんですけれども、その点で写真のような文章を書きたいなってよく思っているんです。つまり、自分自身の視点で切り取る世界観ではあるんだけれども、そこには「うそ」がなくて、隅々まで行き届いた、気付く人には気付ける「詳細」が写り込んでいる。私としては、そういう文章を心掛けています。その意味で「写真のような文章」を書きたいってことを、割と自分にも人にも言ったりしてるんですよね。で、やっぱり使う機材が変わると自分の文章への意識なども変わるなと思っていて、このfpをこれから使っていく中で、自分自身の文章の書き方がどう変わっていくのかというのも少し楽しみな部分でもあるんですよね。


角尾 舞

デザインライター / キュレーター

「デザインを伝えること」を軸に、執筆や展覧会構成、PR企画を行う。
慶應義塾大学 環境情報学部卒業。メーカー勤務を経て、12年から16年まで山中俊治のアシスタントを務める。その後、スコットランドに1年間滞在し、17年10月に帰国。
「日経デザイン」などでの執筆のほか、東京大学生産技術研究所70周年記念展示「もしかする未来 工学×デザイン」(国立新美術館/2018年)の構成、「虫展 −デザインのお手本−」(21_21 DESIGN SIGHT/2019年)のテキスト執筆など。編書には『デザインの小骨話』(山中俊治著·日経BP社/2017年)がある。