© 岩木 十三 Juzo Iwaki

SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary インプレッション

つい先日、ドイツ・ケルンで開催されたフォトキナ2018に合わせてシグマが開発発表した、「SIGMA 56mm F1.4 DC DN | Contemporary」。このレンズを手にしてまず頭をよぎったのは、「軽くて小さいシグマの新レンズを手にするなんて、いったいいつ以来だろうか・・」という、いささかアイロニーを含んだ思いであった。35mm判換算でおよそ85mmとなる、APS-C用中望遠レンズ。最大径66.5mm、全長59.5mm、そして重さわずか280g。開放F1.4の中望遠とは言え、極めて軽量コンパクト。ソニーのα7/α9に装着した時のバランス(重心、見た目とも)も最高で、撮る前から「使えるヤツ」オーラが漂う。Contemporaryラインの単焦点レンズにはすでに「16mm F1.4 DC DN |Contemporary」と「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」の2本があるが、重さに関して言えば、16mmよりはだいぶ軽く、30mmよりはほんの少し重い。

服装やアクセサリーと同じく、手にするカメラもTPOに合わせることが求められる時代になった。その解決策の一つが、周囲から浮くことなく、かつ自分自身もリラックスして撮るためのサブシステムだが、35mm判換算で24mm、45mm、85mm、しかもすべて開放F1.4というこの3本があれば、もうシステムは完成している。サブという位置付けなら、逆にこれ以上は必要ないのではないか。シンプルなシステムであることが大事なのだ。もちろん、ひとたび使ってみれば、これがサブという位置付けにはもったいないレンズであることはすぐにお分りいただけると思うのだが。

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ポートレート

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中望遠と言えば、まずはど定番とも言えるポートレート。かと言って、モデルを雇って撮影というのもちょっと違う気がする。これは気軽に使うレンズなのだ。写真を生業としていると、かえって家族にレンズを向けることは殆ど無いのだが、ふと思い立って娘に「モデルになってくれ」とお願いしたら、二つ返事でOK。親父としては「えー、やだよー」と言われた場合の切り返しまで考えていたのに、なんだか拍子抜け。撮影の間も(あまり時間をかけると不機嫌になり兼ねないので、ほんの数分だったが)やたらと自然体で、若いってええのう。

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野辺の景色

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元も子もない言い方をすれば、どこで何を撮ろうが、好きな焦点距離のレンズを使って好きなように撮ればよいし、そうやって撮っている限り、写真という趣味は最高に面白い。そんな中で中望遠を使う利点としては「主役を作りやすい」というのがある。それは画面の整理がしやすいという意味もあるし、浅い被写界深度によって主役と脇役を区別しやすいという意味でもある。このレンズの被写界深度は極薄。特に手持ちの最短近くで正確にピントを合わせるには、まず呼吸法の訓練から必要かも知れない。しかしバッチリ合った時のシャープさは特筆に値し、軽さ(というか、ボディに装着した時のバランスの良さ)も相まって手持ちでも1/8秒ぐらいはぜんぜん余裕。

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見切れる画角

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街中のスナップに持ち出してみる。私が普段、こういう場合に使うのは35mm、あるいは28mmで、それはかなり一般的なチョイスだと思うのだが、今回はあえてその感覚で被写体との間合いをとってみた。そこでファインダーを覗くと、当然ながらイメージしていた構図とはかなり違うものがそこに見えるわけだが、これが面白い。こういう撮り方をしてみると、普段、自分がいかに写真で「説明」しようとしているかが分かる。でもこれで全然オッケー。説明なんて必要ない。見切れた部分は見る人が勝手に想像してくれる。

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夜のお散歩

© 岩木 十三 Juzo Iwaki
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では最後にF1.4の底力を見せてもらいましょうか?というわけで夜のお散歩に。夜景で案外分かってしまうのが「画のヌケ」だ。光の量がじゅうぶんにある時には分からないけれど、夜景になると急に眠くなってしまうレンズがあるが(この点に関しては開放F値が暗いレンズの方が総じて優秀だったりする)、このレンズのヌケは見事と言うほかない。さらに、遠景でも立体感が失われない。「F1.4」という共通尺度とはまったく別のところで、このレンズはものすごい性能を持っている。これはもう、冒頭でサブ扱いしたことを謝らなければなるまい。個人的には「フルサイズであるか否か」はそれほど大きな問題ではなく、それよりも、こういう写りを見せてくれるレンズが欲しい。