第249回
2007年から2009年の間、Foveonで撮影した写真を振り返る。/ Looking back photos taken by Foveon between 2007 and 2009
May 13, 2020
1872年に世界で初めて国立公園に指定されたイエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)のほとんどはワイオミング州にあるが、アイダホ州とモンタナ州にもまたがり、面積は8,980km²で東京都(2,188 km²)の4倍以上もある大きな公園だ。間欠泉と温泉が特徴で、マンモス・ホット・スプリングス(Mammoth Hot Springs)には特に迫力を感じた。横からの陽光でとてもドラマチックだった光景は、Foveonセンサーの効果でさらに立体感が増した。
2009年6月撮影。
【使用機材】 SIGMA DP2
2005年秋、アメリカから日本へ一時帰国中の私は、そろそろデジタルカメラを一台持っていてもいいかなと思い、某社のデジタルカメラとシグマ社の標準ズームレンズ(SIGMA 24-70mm F2.8 EX DG MACRO)を都内のカメラ店で購入した。それまでフィルムカメラでもオートフォーカスを使用したことがなかったので、このレンズが私の最初のAFレンズとなった。シグマ社のカメラを初めて手にしたのは2007年4月、シグマ社にとって3台目のデジタルカメラとなるSD14だった。扱いやすいカメラとは言えなかったが、ハマった時には驚くような画像が得られた。RGB全色を3つの層で取り込む「Foveonセンサー」から出力された画像の解像感と豊かな諧調表現、立体感のある描写が印象的だった。そして、世の中がデジタル、デジタルと騒ぎたてることに抵抗があった当時の私に、どことなくフィルムチックな「Foveonセンサー」の写りも新鮮な魅力に感じた。
このところ、外出を控え自宅で過去の写真を見直す機会が増えている。今回は、この連載が始まる以前(連載は2010年1月からスタート)の2007年から2009年の3年間、Foveonセンサー搭載のSD14とDPシリーズで撮影した写真から何点か選び振り返ってみた。
アサバスカ氷河(Athabasca Glacier)は、カナダのバンフ国立公園とジャスパー国立公園の大陸分水界をまたぎ、この125年間で氷河は縮小しているがそれでも面積は約6km²、氷が最も厚い部分は300mもあり、面積約325 km²の巨大なコロンビア大氷原(Columbia Icefield)の一部だ。
この日、山脈の上部にはガスがかかっていたものの、この地にしては最高の天候で薄く淡いブルーの氷河が鮮明に見えた。私が立っていた場所からはかなり距離があったが、手を伸ばせば触れるような気がするぐらい氷河がシャープに撮れた。
2007年4月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA 18-50mm F2.8 EX DC MACRO
ソノマ郡(Sonoma County)は、サンフランシスコ湾岸の北部、太平洋沿岸に位置し、アメリカで13番目に指定されたワイン栽培地区で世界的に有名だ。緩やかな丘陵地帯と平坦な土地に広がるブドウ畑は美しく、春には沢山の花が咲く。この日、手にしたばかりのSD14でソノマ郡の美しい風景を切りとった。この写真に使用した(SIGMA APO 50-150mm F2.8 EX DC HSM)の写りは満足のいくものだった。コンパクトですんなりとしたスタイルも気に入り、カメラ機材は手にした感触も大事だと思った。
2007年4月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA APO 50-150mm F2.8 EX DC
カリフォルニアの州都サクラメント(Sacramento)から150kmほどフリーウェイを北上した辺りで広大なヒマワリ畑を見かけ近づいてみた。車から外に出て撮影に良い場所を探し始めると額から汗がたれてきた。この日は記録的な猛暑日で暑さのためカメラが壊れてしまうか心配だったが、その心配は必要なかった。
2007年7月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA APO 50-150mm F2.8 EX DC
アメリカ南西部にあるザイオン国立公園(Zion National Park)は、ノース・フォーク・ヴァージン川によって、砂岩である赤いナバホ・サンドストーンが侵食されてできた長さ24km、深さ800mのザイオン渓谷が特徴だ。谷底をアクティブに移動していると、クライマーを砂岩の壁の所々に見かけた。この時SD14に装填していた広角から望遠まで大きくカバーする11.1倍の高倍率ズームレンズは軽量コンパクトで、ハイキング好きの私には欠かせないレンズとなった。
2007年10月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC OS
2008年はシグマ社から多くのレンズが発表され、中でも私は使用したことはないが、APO 200-500mm F2.8/400-1000mm F5.6 EX DG は衝撃的だった。そしてコンパクトなデジタルカメラDP1は常に持ち歩くカメラとなった。
キングズ・キャニオン国立公園(Kings Canyon National Park) は、シエラネバダ山脈南部、カリフォルニア州フレズノの東に位置するアメリカ合衆国の国立公園だ。隣接するセコイア国立公園と共に巨木で知られるが滝もすばらしく、中でもグリズリーの滝(Grizzly Falls)は圧巻だった。雪解け水で勢いを増し、離れていても水しぶきをかぶった滝はモノクロームで再現像した。
2008年5月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA APO 50-150mm F2.8 EX DC
深い霧に包まれた森の中、超広角ズームレンズで巨木を見上げ撮影した。地面からの高さは83.8m、2002年時の体積は1,487立方メートルに及び、地球上でもっとも大きな木、もっとも大きな生命体であると考えられている。樹齢はおよそ2200年と推測されるセコイアデンドロンの巨木は、シャーマン将軍の木(General Sherman tree)と名付けられ、カリフォルニア州 にあるセコイア国立公園内の原生林に生息している。
2008年5月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA 10-20mm F4-5.6 EX DC HSM
カリフォルニア州モノ郡にあるモノ湖(Mono Lake)の石灰石から成るトゥファタワーが湖面と共に朝陽に染まる。76万年以上前に誕生したと考えられ、非常に塩分濃度の高い塩湖は、湖水に大量のカルシウムが溶け込み、湖底から炭酸水が湧き出し水中で石灰石から成るトゥファタワーが生成される。1941年から1990年の間、ロサンゼルス市水道局が湖水から水を市へ引いたため湖面が低下し一部のトゥファが水面に姿を現した。使用したDP1は、それまでのコンパクトデジタルカメラでは考えられない高いクオリティーの写真が撮れた。
2008年6月撮影。
【使用機材】 SIGMA DP1
氷河から解け出た水に含まれる岩粉により、湖は独特なエメラルド色をしているレイク・ルイーズ(Lake Louise)は、カナダアルバータ州のバンフ国立公園内にある湖だ。以前4月に訪れた時は、標高1,536m の湖面には氷が張り、後方に聳える標高3,464mのビクトリア山は麓まで雪に覆われていたが、快晴のこの日、エメラルドブルーの美しい湖面にはボートが浮かび、短い夏を楽しむ人々で湖岸は賑わっていた。この時はほぼ逆光だったが、使用した標準ズームレンズはフレアやゴーストに強く、不安なく何でも撮れるズームレンズだった。
2008年8月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA 18-50mm F2.8 EX DC MACRO
イエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)は、そこに生息する野生動物たちが訪問者を魅了する。中でもバイソン(Bison)は、大きさは肩までの高さが1.5~2メートル、体重が900キロ以上にもなる。重い体でゆっくりと動く草食動物のイメージがあるが、その気になれば時速65キロもの速さで走ることができる。19世紀になると開拓者により5000万頭ものバイソンが殺されたが、公園内では今日でも北アメリカのシンボル的な動物を身近に目にすることができる。この日は薄曇りで草原に柔らかな光が差し、春の優しい空気感が漂っていた。
2009年6月撮影。
【使用機材】 SIGMA SD14, SIGMA APO 120-300mm F2.8 EX DG HSM
北カリフォルニアの小さな集落ダンスミア(Dunsmuir)からサクラメント川の上流沿いに並行して敷かれた貨物列車の線路際を45分ほど歩くとモスブリーフォールズ(Mossbrae Falls)が見えてくる。草の間から湧き出た水が至るところからサクラメント川に流れ落ちている。滝は川が曲がって流れる外側にあるので、川を大きく入れて滝を撮ることができるのがいい。この時、光の差し込み加減で滝にしばらく虹が出て、夏休みのいい思い出となった。
2009年7月撮影。
【使用機材】 SIGMA DP2
毎年クリスマスのホリデーシーズン中、自宅から車で5分の距離にあるマンハッタンビーチ(Manhattan Beach)で花火大会が開催される。この年は近くで花火を見ることにした。ビーチ沿いのパーキング場は満車なので、ビーチから少し離れた路上に車を停めてビーチまで歩いた。この日の夜は風もなく気温も比較的高く花火鑑賞には最適な夜だった。DP1の後継機であるDP1sを小さな三脚に据え撮影、帰宅後すぐに現像したことを思い出す。撮影中、打ち上がった花火に気を取られて気に留めなかった桟橋上の発射台が克明に写っている。シャープな解像度は今見ても圧巻だ。
2009年12月撮影。
【使用機材】 SIGMA DP1s
今回掲載した2007年から2009年の写真は生産終了した製品で撮影したものだが、今見てもなかなかいいと感じた。コロナウイルスのための行動制限は、じっとしているのが苦手の私には大変ストレスフルだが、過去に撮った写真を見直し整理する時間が持て、毎日あっという間に過ぎている。これは意外な発見だった。