第267回
デスバレーにあるキーン・ワンダー鉱山 / The Keane Wonder Mine in Death Valley
February 03, 2021
デスバレーの東側、アマルゴーサ山脈のフューネラル・マウンテンの西斜面に、最盛期には1日70トンの金鉱石を運んだトラムウェイの支柱がまだ力強く建っている。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
冬の日、二人の友人とデスバレー国立公園でキャンプをすることになった。全米最大の国立公園の面積は13,158平方キロメートル(長野県とほぼ同じ)と大きく、予定をしっかり決めないと移動に時間を食われてしまう。友人二人はデスバレーに来たことがないので、公園の中心部から離れず軽めのハイキングを計画し、私は友人達が来る前日に公園内へ入り、公園の北に位置するユービーヒービー・クレーター(Ubehebe Crater)へ向かった。
約300年前の噴火で出来たユービーヒービー・クレーターは、幅800m、深さ183mと大きく色彩が豊かだ。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN | Art
ユービーヒービー・クレーターをしばらく眺めた後、レイストラック(Racetrack)と呼ばれる乾燥平野を目指したが、ダート道を走り出してすぐにすれ違った車を運転する女性が、「道は以前よりかなり荒れ、四輪駆動車でないと動けなくなるから戻って来た。あなたもこの先へ行かないほうがいいわ」と私に告げた。レイストラックへは普通車で一度行ったことがあったが、今回の旅は友人も参加するので安全第一と考えていた私は、女性の忠告を聞くことにした。実は借りたレンタカーのバッテリー不良で、前日に荒野で車が動かなくなり、人の助けを借りてエンジンをスタートさせ、レンタカー屋へ戻り車を交換していたことも慎重になった要因だった。レイストラック行きを諦めた私は、公園の中心地であるファーニス・クリークス・スプリングスの近くにあり、デスバレーの歴史を語るには欠かせないホウ砂工場跡であるハーモニー・ボラックス・ワークスに立ち寄った。ホウ砂はフル稼働時、中国人労働者によって毎日3トンが採掘されたが、夏は非常に暑く、処理水が十分に冷えずホウ砂を結晶化させることが困難だった。そのため創業者のウィリアムT.コールマンは、100kmほど南にホウ砂工場を移したが、ハーモニー・ボラックス・ワークスは、コールマンの事業が閉じられる1888年まで稼働した。
1883年から1889年にかけてデスバレーからホウ砂を輸送した大型ワゴンを後方から撮影。ワゴンは、18頭のラバと2頭の馬のトウェンティ・ミュール・チーム(Twenty Mule Teams)によって引かれた。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
1881年にホウ砂が発見された後、1883年から鉱石の処理が始まり、フル稼働時ハーモニー・ボラックス・ワークスには40人の労働者がいたが、この建物は労働者の住居跡だろうか。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
ホウ砂工場跡からは水の流れを見たくなりソルト・クリークに立ち寄った。乾燥したデスバレーは巨大な淡水湖の一部だったが、約1万年前に干上がり、その過程で淡水が塩水に変わっていった。ソルト・クリークはその湖の名残だ。
この日はデスバレーにテントを張る予定だったが、前日の車のトラブルで寝不足気味だった私は、日没時刻に公園から出て、公園の東にあるネバダ州のモーテルに宿泊した。温かい部屋で睡眠を取り元気を取り戻した私は、翌朝、暗いうちに公園に戻り、モスキートフラット砂丘(Mesquite Flat Sand Dunes)で日の出を待った。
水が淡水から塩水に変わる環境に順応して生存してきたソルトクリーク・パップフィッシュは確認出来なかったが、乾燥した土地で水の流れを見ていると心が和んだ。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
夕方、冷たい風が吹き抜ける山影のダート道を一台の車が土煙を上げて走って来る。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
西に沈む陽の光に染まるデスバレー。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN | Art
砂丘の上から一度下りようとして付いた私の足跡を入れ、日の出を撮影。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN | Art
この朝砂丘の高い所まで登ってきた自分の足跡。以前広角レンズで撮影したことはあったが、この朝は長めのレンズを使用してみた。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
ソルト・クリークと砂丘を動画でも撮影した。
砂丘で日の出を迎えた後、テキサス・スプリングス・キャンプグラウンドへ行き、サイトを確保しテントを張った。久しぶりのデスバレーだったが、この地の空気にすっかり溶け込んだ私は、のんびりとロサンゼルスから来る二人の友人を待った。友人が無事到着し彼らがテントを張った後、キャンプグラウンドから約37km北へ車で走り、この日の午後は、渓谷内で最も成功した金鉱山のひとつだったキーン・ワンダー鉱山跡の周辺を三人で散策した。この鉱山は、広い範囲で多くの鉱石を採掘したため周辺の土地が崩れ落ちる危険があり、加えて鉱山での処理の際に出る鉛、水銀、シアン化物が検出され、訪問はしばらく禁止されていたようだが、安全が確認されたのか現在は多くの人が訪れている。
鉱山の中心地だった場所まではトレイルがあるが、敢えて道なき斜面から登ってみた。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
荒涼とした土地に錆びた鉄が散乱している。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
朽ちて倒壊したタンク。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
キーン・ワンダー鉱山の中心部だった場所まで登る。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
まだ倒壊せずに残っている一番大きな建物。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
完全に倒壊した建物が午後の強い日差しに光っていた。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
タンクに繋がっているパイプのつなぎ目が切れてむき出しになっている。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
トラムウェイの支柱越しにデスバレーを見渡す。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
トラムウェイは更に上の山まで続いている。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
二人の友人を残してここまで登ったが、トラムウェイはこの倍の高さの斜面まで続いていた。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
タンク越しに今晩泊まるキャンプ場がある方向を眺める。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
夕陽に輝くフューネラル・マウンテンの斜面とデスバレー。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
錆びたタンクが陽でさらに赤く見える。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
キーン・ワンダー鉱山跡からの帰り道、こちらへ向かって走って来る車の土煙が夕陽の色に染まり、思わず車から出て撮影した。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
夕食を食べ酒がだいぶ回ってくると東の山からもうすぐ月が昇る時刻だった。
【使用機材】 SIGMA fp, SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
キャンプグラウンドでバーベキューと焚き火を楽しんだ光景を動画に記録した。
デスバレー初訪問となる二人の友人は料理が得意なので、私一人のキャンプと比べると非常に贅沢な夕食となり酒も進んだ。乾燥した空気の中、薪はよく燃え寒さも気にならなかった。よく食べてよく飲み、気がつくと三人はそれぞれのテントで死んだように寝込んでいた。