第321回
第69回全日本チンドンコンクール(後編)/ The 69th All-Japan“Chindon” Traditional Street Performer Contest (Part2)
June 09, 2023
4月8日(土)、富山県富山市の富山県民会館で開催された「第69回全日本チンドンコンクール」の幕が上がった。今年は異例の早さで桜が開花し、コンクールの時季は満開のはずだった桜は散ってしまったが、この日の予選に出場する28組のチンドンマンは皆、晴れ晴れしい顔をして舞台に立っていた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
「めっちゃめっちゃユーモアな演技で、そして真剣に1人でも多くのチンドマンファンをつくって帰ることを宣誓いたします。」と、長崎から出場した「かわち家」の河内隆太郎さんが開会式で宣誓したが、前日とこの朝の撮影を通し、私はコンクールが始まる前から既に芸達者で人情味あふれるチンドンファンになっていた。
28組のプロのチンドンマンによる予選は、A、B、C、Dの4つのブロックに分かれ、各チーム(3人構成)のスポンサー企業・団体のPRを持ち時間の3分以内で演技し競い合い、各ブロックから上位2チームの8チームが翌日の本戦へ進んだ。
新型コロナウイルス感染症の影響により第66回から68回まで3年連続で中止となり、4年ぶりのイベントは出場する側も観る側も例年より大きな期待感を持っていると予想した。そして、コンクールではチンドンマンと観客の邪魔にならないよう、無理せず撮れるシーンだけをカメラに収めた。
予選の初めだけ客席の入り口付近から少し撮影した。舞台で演技する「チンドン好井&さかえや+X」チームは、昨年亡くなったアントニオ猪木さんのレスラー時代の入場曲とベリーダンサーの踊りが印象的だった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
上手の舞台袖で演技を終えたチームが、演技中のチームを椅子に腰掛けて見守る。
状況に応じて振る舞いをわきまえるチンドンマンの姿がここにあった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
いとも簡単に一輪車に乗って楽器を吹く演技等で富山競輪場をPRした「こんぺい党」チームを下手の舞台袖から撮影。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
これから舞台に出る前の「囃子家」チーム。
舞台袖では出演者の様々な表情が見られた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
「全日本チンドンコンクール」の本戦が行われた4月9日の日曜日は朝から快晴となった。私は、前日予選敗退となったチンドンマンが松川べりを練り歩く光景を少し撮影した後、会場の富山県民会館へ向かった。
前日惜しくも予選敗退となったチンドンマンが城址公園に集まり、4年ぶりの再会となるチンドンマン達の会話にも花が咲いていた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
「チンドンマンが桜並木の下を華やかに練り歩きます。」とプログラムに紹介されていた「松川べり練り歩き」は、桜の花がなくても見物人を十分楽しませていた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
本戦は予選を勝ち抜いた8チームによるトーナメント方式で、予選より長い持ち時間(3分30秒内)でスポンサー企業・団体をPRして競った。この準決勝を勝ち抜いた4チームによる決勝は、「全日本チンドンコンクール」そのものをPRして優勝チームを決める方式だった。そして、今年の優勝チームは開会宣誓をした長崎の「かわち家」チームで3大会連続の優勝となった。
これから準決勝の舞台に出ていく「べんてんや」チーム。
女性3人のカラフルな衣装は見ているだけで心を明るく楽しくさせた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
準決勝の演技を終えた「菊乃家」チームはやり切った感に溢れ楽しそうだった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
今大会準優勝の「チンドン芸能社・美香」チームが決勝の舞台へ出てゆく直前の光景。
連獅子の赤い頭は派手なチンドンマンの中でも特に目を引いた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
1945年(昭和20年)8月1日から8月2日にかけ、富山市がアメリカ軍から受けた空襲(富山大空襲)は軍需工場ではなく市街地に対して行われ、太平洋戦争で広島と長崎への原子爆弾投下を除く地方都市への空襲としては最も被害が大きかった。空襲により受けた復興事業の象徴として、城址大通りと同様に富山市により建設された平和通りで、ブラスバンドやプロとアマチュアチンドンマン等による総勢200名以上のチンドン大パレードが行われた。私は、優勝チームが決まったのを見届けると富山県民会館を出てランチブレイクを取った後、パレードが始まる1時間前に平和通りに移動した。舞台裏に興味を置いていた私は、大勢のアマチュアカメラマンもいたのでパレードでは控え目に動いた。
プロのチンドンマンの先頭をパレードする「かわち家」さんと「ちんどん月島宣伝社」さん。
プレスパスがあったので立山連峰を背景に平和通りの真ん中に出られたが、数枚撮影した後、一般の観客の中へ戻った。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
パレードの後、富山湾で捕れたホタルイカを購入した。2月下旬から5月にかけて、富山ではホタルイカは産卵のために夜一斉に浮上し、産卵後に浜に打ち上げられて刺激を受け、一斉に青い光を発光する「身投げ」と呼ぶ現象が見られる。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
立山連峰も鮮明に見える快晴となった「全日本チンドンコンクール」の最終日は、「富山はどんな所ですか?」と尋ねた私に、「富山の空は鉛色」と笑いながら答えた富山出身のSさんの命日だった。カメラマンからデザイン会社を起業したSさんから手渡された中判フィルムカメラで23年前に撮り始めた企画(現在はデジタルで撮影)は、今年写真展を開催するまでに至った。平和通りで雄大な立山連峰をバックにした明るく賑やかなチンドンマンにレンズを向けたこの日、30年前に亡くなったSさんにも会えたような気がした。
私が幼児の時に追いかけたチンドン屋さんのほとんどはもうこの世にいないと思うが、今後は令和のチンドンマンの活躍に期待し応援したい。
「全日本チンドンコンクール」Webサイト
https://www.ccis-toyama.or.jp/toyama/cin/top.html
賑やかなチンドンマンのパフォーマンスは3本のズームレンズで撮影した。
富山県民会館
撮影風景と機材
コンクール会場では一般の人が立ち入れない舞台裏からも撮影できた。
パレードでは始めだけ道の中央に出たが、後は一般見物人と同じ場所にいた。