Ani Watanabe’s Impression
SIGMA New Mirrorless Lens Series

本格的なミラーレス化が加速する現在、高性能なフルサイズミラーレスカメラに対応できるレンズへの期待はますます高まっています。その一方で、性能やサイズ、ラインアップの充実度、複数のシステム併用の負荷などの点から、ミラーレス用レンズシステムの選択肢がないと感じている方も多いのではないでしょうか。こうした状況に対する最適解としてSIGMAが新たに開発、提案するのが、このミラーレス専用レンズシリーズです。
SIGMAは、Contemporary、Art、Sportsのコンセプトはそのままに、ミラーレスカメラの特徴であるショートフランジバックを活かした設計により、これまでにない仕様や性能の交換レンズを開発していきます。その第一弾として2019年7月に3本のレンズを発表しました。
こちらのページでは、写真家・ワタナベアニ氏がSIGMAの新しいミラーレス専用レンズシリーズを使用したインプレッションと作品をご覧いただけます。


45mm F2.8 DG DN | Contemporary
常用単焦点レンズにふさわしい性能とサイズのベストバランスを追求。Contemporaryラインのフルサイズミラーレス専用レンズ、登場。


14-24mm F2.8 DG DN | Art
ミラーレスに最適化した最新設計による
究極の大口径超広角ズームレンズ。
圧倒的な解像感を発揮する「星景写真用レンズの決定版」
IMPRESSION
ミラーレス専用設計であることが、コンパクトさに貢献しているのだろうと感じる。小さめのカメラボディに装着した一瞬だけ、「やや大きいかな」と思うのだが、使っていると気にならなくなってくる。
実は、この焦点域を多用するコンセプトの仕事がつい最近まで半年ほど続いていた。そのロケには24mm F1.4 DG HSM | Artを持って行くことが多かったんだけど、今なら迷いなくこれを持って行くだろうと感じた。まず、ズームであることのマイナスポイントがほとんど見当たらない。どの焦点域でも線の細い美しい描写。
4,000万画素を超えるのが当たり前になったカメラのセンサー性能にも後押しされて、これからは広角レンズがどんどん魅力のあるモノになっていくと思う。今までは標準から中望遠、つまり被写体が大きく映るモノには不満がなかった。でも「引いた絵」がフィルム時代の大判カメラ程度に高精細になると広角や超広角を使いたくなる。
それもただ雄大な風景を撮るだけではなく、不思議な画角のポートレートや変わった視点の日常風景など、表現が大きく広がる気がしている。近景と遠景の描写バランスがいいので、前後にダイナミックなレイヤーを配置する構図も、今までとは違う撮り方が試せるのではないかと思う。

45mm F2.8 DG DN | Contemporary
常用単焦点レンズにふさわしい性能と
サイズのベストバランスを追求。
Contemporaryラインのフルサイズミラーレス専用レンズ、登場。
IMPRESSION
35でも50でもない45mmの画角は、スナップからポートレートまで幅広く使える。スタジオなら性能重視の大きくて重いレンズでいいし、スナップで持ち歩くならコンパクトな方がいい。撮影の状況に応じて使いたいレンズは違うが、重要なのは選択肢があることだと思う。以前はコンパクトで安価なレンズは明らかに性能が劣ったものだが、今は違う。特にデジタルカメラのシャープネスやカラーバランスの後処理の自由さを考えると、ほんの少し数値上の性能が劣るくらいなら機動力がある方をチョイスするのも悪くない。
45mm F2.8 DG DN | Contemporaryを初めて手にしたとき、「これは毎日使うだろうなあ」という感想を持った。丁度いい画角でコンパクト。金属フードを始めとした質感にも一切の手抜きがない。クラシックレンズのような柔らかい開放描写は、デジタルが持つエッジの鋭さをうまく消してくれる。変な表現かもしれないけれど、それだけで「写真になっている」ように見える。
フォーカスが合ったシャープな部分から続く、特徴のあるボケがフィルムに似た懐かしい印象を与えるのだろう。絞っていくと繊細で現代的でクリアな描写になっていくが、これくらい絞ればいいだろうと想定した一絞りくらい手前で十分に美しいエッジが立つことに気づく。ポートレートでも風景でもスナップでも満足のいくレンズだと感じた。

35mm F1.2 DG DN | Art
SIGMA初の開放値F1.2、大口径単焦点レンズを最高性能で。
IMPRESSION
メーカーによっては、F1.4あたりでもフリンジが出て本来の開放値を使うことができない大口径レンズも多いのだが、SIGMAの大口径レンズはどれも開放での描写に繊細な印象がある。このレンズもとにかくボケが美しい。最近、F1.2のレンズを使っていなかったこともあって、テストで撮ってみると驚きがあった。人間の目で見ている映像とはまったく違う写真がモニタに浮かび上がる。ボケによる深い遠近感の際立ち方、被写界深度が浅すぎることによる逆アオリにも似たスケール感のズレ方も面白い。使い始めてからしばらくは、その魔法のような描写の虜になるだろう。
一旦落ち着いて、それぞれの絞りや被写体との距離で変わる表現の違いを確かめてみる。なんでもない静物はドラマチックな陰影を描き、スタジオで絞ってみると極限まで精密でクリアな写り方をした。
35mmという、自分にとって一番使うレンズにこれが加わったことは幸福だ。ほとんどのモノは35mmさえあれば撮れると思っているからこれから出番は多くなるだろう。特に今までは50mmで撮っていたモチーフをこれで撮影することが増えるんじゃないかと感じた。
APS-Cやムービーカメラでの1.5倍クロップも面白い使い方ができるだろう。