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24-70mm F2.8 DG DN | Art
Impression

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/640s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
焦点距離 24mm
ホワイトバランス 日陰
撮影者 安達 よしの

© 安達 よしの Yoshino Adachi

ミラーレスカメラ専用に設計されたDNシリーズに、新たに開発されたSIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art が加わった。レンズはショートフランジバック専用にすることにより、設計の自由度が上がり高性能と小型軽量を両立させることができる。本レンズは手ブレ補正や収差の補正をボディ側に任せることで、さらなる軽量化を図っている。ズームレンズはコンパクトで軽い方が良い。そんな要求に応えてくれた、撮り手の立場を考えるシグマらしい一本だ。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/250s
絞り値 F5.6
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
焦点距離 24mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 安達 よしの

© 安達 よしの Yoshino Adachi

全てのズーム域で変わらない美しい線を描く

シグマのレンズのいちばんの特長は緻密な線で描いたような写り。この繊細な描写を知ってしまうと、シグマでしか描けない世界を求めてしまう。そして、どんな条件であってもシグマのレンズは撮影者の求めることに応えてくれる。Artラインは、曖昧さの無い描写で、光の条件によっては消えてしまいそうなディテールまでも忠実に再現。作例のように、明暗差が大きいビルの壁面を撮る際に全体のバランスを考えて露出を決めると、空に溶け込んでしまいがちなビルの最上部まで、乱れることのない細い線でディテールを描き切る。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/80s
絞り値 F5.6
露出モード M-マニュアル
ISO感度 160
焦点距離 70mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 是永 悟

© 是永 悟 Satoru Korenaga

70mmで撮影。少し湿度を含んだ夕景の柔らかい光線で撮ると、どうしても空気の層の影響で、細かな描写が犠牲になりがちだ。しかし本レンズは、夕暮れの柔らかい光に包まれた街のディテールを一本の線もおろそかにすることなく精密に写し出す。良くここまで写るものだと感心してしまう。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/2500s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
焦点距離 26mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 安達 よしの

© 安達 よしの Yoshino Adachi

AFのブラッシュアップ

レンズは小型軽量化されているが、AFの使いやすさは格段に良くなっている。まずステッピングモーターの採用によりAFスピードが向上。撮りたいと思った瞬間にスッとピントが合いシャッターが切れる。それは被写体が画面の中心にあっても周辺であっても変わりはなく、動きのある被写体もきっちりと写しとめる。高い描写力とAF精度は、同時に進化して初めてその価値を見ることができる。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/80s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
焦点距離 70mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 安達 よしの

© 安達 よしの Yoshino Adachi

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/1600s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
焦点距離 66mm
ホワイトバランス 日陰
撮影者 安達 よしの

© 安達 よしの Yoshino Adachi

次に瞳AFに対応したこと。「目は口ほどに物を言う」「画龍点睛を欠く」など目に関わる格言が多いことでわかるように、ポートレート写真の肝は瞳の表情にある。実際撮影時にはAFのポイントをできるだけ小さくして瞳を狙うが、動く被写体の瞳を追い続けるのはかなり難しい。また、瞳をAFポイントで追うことに集中して全体の表情を見過ごしがちになることも。瞳AFに対応することで、ピント位置を気にせず、良い瞬間を狙うことだけに集中できるようになった。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/30s
絞り値 F8
露出モード M-マニュアル
ISO感度 160
焦点距離 70mm
ホワイトバランス オート
撮影者 是永 悟

© 是永 悟 Satoru Korenaga

最後はレンズに装備されているオートフォーカスロック(AFL)ボタンについて。AFLボタンはレンズをホールドするちょうど親指あたりに位置している。しっかりとレンズを支えながら、ピントが動くことを心配せずに自由にシャッターを切る。たった一つのボタンが備えられているだけで、思った以上にストレスが解消されることがわかった。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/200s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
焦点距離 66mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 安達 よしの

© 安達 よしの Yoshino Adachi

綺麗な玉ボケが見せる自然なボケ味

Artラインのボケ味には定評がある。それは、前ボケ、後ろボケも同じ傾向に柔らかくボケていき、クセもなく素直で使いやすいこと。そして開放での玉ボケは、ともすれば癖が出がちな開放での描写を自然なボケ味に見せる要因になっている。
新しい本レンズは、そんな大事な玉ボケに更にこだわりを見せ、絞った状態でも円形絞りを実現している。具体的には、一眼レフ用の「SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art」の絞り羽根枚数が9枚だったのを、11枚に増やしているのだ。絞り羽根が11枚になることで、絞ったときにも玉ボケの形状が円になるためボケがざわつくことを防いでいる。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/80s
絞り値 F2.8
露出モード M-マニュアル
ISO感度 320
焦点距離 56.7mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 是永 悟

© 是永 悟 Satoru Korenaga

開放で撮影。円というより球のような立体感を持ったボケ方で柔らかい雰囲気を演出している。画面上の白いボケは、楕円状になっているため初めは口径食のように見えたのだが、下の絞った作例を見ると外灯の形をトレースするようにボケていることがわかる。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/30s
絞り値 F5.6
露出モード M-マニュアル
ISO感度 320
焦点距離 56.7mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 是永 悟

© 是永 悟 Satoru Korenaga

F5.6まで絞って撮影。絞っても綺麗な玉ボケが得られるため、点光源の大きさを円形を保ったままコントロールすることができる。

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/1250s
絞り値 F2.8
露出モード A-絞り優先オート
ISO感度 100
焦点距離 67mm
ホワイトバランス マニュアル
撮影者 原口 弘

© 原口 弘 Hiroshi Haraguchi

カメラ SONY α7R III
シャッタースピード 1/160s
絞り値 F2.8
露出モード M-マニュアル
ISO感度 100
焦点距離 70mm
ホワイトバランス 昼光
撮影者 是永 悟

© 是永 悟 Satoru Korenaga

ミリ単位の表現にこだわる

かつて、焦点距離50mmが写真の原点であったように、ズームレンズの高性能化が24-70mm F2.8という大口径標準ズームレンズをその位置に押し上げてくれた。撮り手はここをベースとして、さらなる写真表現を求めレンズの世界を広げていくのだろう。この試写を終え、そんな風に思えた。その理由は、描写の変化を気にせず、パース感をコントロールできる安定した描写性能にある。つまり、数ミリ単位で焦点距離を自由に操れることが写真を撮る上で大きなアドバンテージとなるのだ。

SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Artは、標準ズームレンズを「便利な存在」から「この1本でしか撮れない」と思わせる存在へと高め、表現を極めたい撮影者に対し、新たな世界を見せてくれる。