インプレッション

木のゆくえ

CONTEMPORARY
16–300mm F3.5–6.7 DC OS

by 山口 規子 | Noriko Yamaguchi

キコリを撮り続けている私は、いつも「木のゆくえ」が気になっている。苗畑に蒔かれたスギの木の種は、約三年後に山へ植林され、何十年もの間、山で暮らす。そして大きくなると伐倒され、製材され、様々な形になって、私たちの暮らしの中へ溶け込んでいく。木は長い旅をするのだ。
そんなことを想いながら、Sigma 16-300mm F3.5-6.7 DC OS | Contemporary を持って間中木工所へ。

工房に入ると木の匂いが鼻をくすぐる。山で見た木々たちが姿を変えて、この工房にいた。職人さんたちが、その木を大切にしながら、ひとつひとつ丁寧に家具を作り出していた。

職人さんを撮るときに心がけているのは、できるだけ作業の邪魔をしないこと。
このAPS-C用高倍率ズームレンズの16mmから300mmは、35mm換算では24mmから450mmとなり、心強い味方だ。
くるりとズームリングを回すだけで広がる様々な世界には、わくわくが止まらない。

工房の隅にひっそりと立ち、300mm側へズームリングを回すと、遠くの職人さんの手元がファインダーの中に一気に浮かび上がる。
シャッターを押す。もちろん、シャッター音は職人さんには届いていない。この瞬間が好きだ。

職人さんとコミュニケーションをとるときや、ローアングルで狙うときは、16mm側でぐーっと近づいて撮る。ここでは16mmでの最短撮影距離17cmの威力を目の当たりにした。こんなにも近寄れるなんて驚きだ。
コンパクトで軽量なので、作業台の下、作品と作品の隙間、どこからでも自由自在に撮れる。
被写体に威圧感を与えない、レンズの小ささが特に印象的だった。

撮影を終えて、ある職人さんが話していたことが、今でも心に残っている。
「ぼくたちは、道具がないと何もできないんですよ。道具がなければ、木も切れないし、削れないし、釘も打てない」写真家も同じだ。レンズがなければ、写真は撮れない。
残したい瞬間、残したい記録、全ては信頼できるレンズとともに生きている。
今回、木くずをちょっと浴びたSigma 16-300mm F3.5-6.7 DC OS | Contemporaryも、愛おしいレンズになることだろう。

BEHIND THE SCENES

ABOUT

山口 規子 | Noriko Yamaguchi
写真家

栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。文藝春秋 写真部を経て独立。女性誌や旅行誌を中心に活動。
「イスタンブールの男」で第2回東京国際写真 ビエンナーレ入選、「路上の芸人たち」で第16回日本雑誌写真記者会賞 受賞。東欧をモノクロフィルムで捉えた写真集「I was there.」や柳行李職人を撮り続けた写真集「柳行李」、日本の林業に興味を持ち、青森のキコリを追い続けた写真集「KIKORI 木は長い夢を見る」などがある。
料理本や暮らしに関する撮影書籍も多数。旅好き、ネコ好き、チョコ好き。 公益社団法人日本写真家協会 副会長

撮影協力:株式会社間中木工所