押本龍一「私の出会う光景」

back to Index
第250回

モノクロのタイトル写真をカラーで再現像 / Redevelop monochrome title photo in color.

photo property details
カメラSIGMA DP2
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモード風景
シャッター速度1/15秒
絞り値F4.0
焦点距離24.2mm

2010年1月20日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2010/20100120.html
カリフォルニア州南東部に位置する面積3,196平方キロメートル(東京都の約1.5倍)のジョシュアツリー国立公園は、1994年ナショナル・モニュメントから国立公園に昇格した。近年、人気のある公園内のキャンプ場はすぐにいっぱいなるので現地に早めに到着する必要があるが、10年前のキャンプ場にはかなりの空きがあった。この日、私は公園内で一番大きなキャンプ場の岩に囲まれたサイトにテントを張った。しばらく巨岩の上を歩きまわった後、サンセットを迎えるのにいいロケーションを探すためキャンプ場を出た。結局、特別な風景は撮れなかったが、穏やかなサンセットをカメラに収めることは出来た。サンセットは、カラーだろうと思いがちだが、過去に掲載したモノクロもけっして見劣りしないのは発見だった。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ2640 × 966
ファイルサイズ1.2MB

1984年、暗室作業の腕を買われ、ニューヨークの5番街にあった広告写真スタジオに雇われた。ロールフィルムからシートフイルムまで失敗出来ない緊張感を持って現像し、沢山のプリントをした。暗い中、根を詰め過ぎるといくら目を凝らしても正しい判断が出来なくなるので、こまめに短い休憩を取った。酢酸の匂いが漂う暗室から出て階段を下り、ビルの玄関口で外の空気を吸い、階段を上って4階にあるスタジオに戻り、一杯のコーヒーを飲み暗室に戻るのだ。その当時、暗室に入らずモノクロ写真が扱える日が来るとは夢にも思わなかった。フィルム時代の暗室作業は立ちっぱなしで、焼き込みと覆い焼きで手もよく使った。デジタルになり薬品の匂いからは開放されたが、椅子に座っての作業ばかりになり、体を動かすのが好きな私には、今と昔はどちらがいいのか分からない。連載「私の出会う光景」のタイトル写真は、第248回(ティールアンドオレンジで再現像)を除いた全てがモノクロだ。今回は、タイトル写真用に掲載した過去のモノクロ写真で、連載が始まった2010年から今年まで各年から1点ずつ選び、カラー写真に再現像した。

photo property details
カメラSIGMA SD1
レンズSIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度200
ホワイトバランス晴れ
カラーモード風景
シャッター速度1/500秒
絞り値F5.0
焦点距離200mm

2011年12月20日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2011/20111220.html
ペンシルベニア州ランカスター・カウンティー(Lancaster County)の早朝、馬車を引くリズミカルな馬の足音と馬車の車輪の音が、収穫時期を終えたトウモロコシ畑に響き渡っていた。大地とともにシンプルな生活をするアーミッシュ(Amish)は車を所有せず、馬車は重要な移動手段だ。この写真は、トウモロコシ畑に映る馬車の影を意識し、大口径望遠ズームレンズですばやくフレーミングして清々しい朝の空気感と共に撮影した。朝日に輝くトウモロコシ畑はモノクロでしっかりと描写出来たが、朝日の暖かさが強調できたのはカラーにして良かった点だ。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ3264 × 2176
ファイルサイズ6.2MB
photo property details
カメラSIGMA SD1 Merrill
レンズSIGMA 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランスオート
カラーモードスタンダード
シャッター速度1/250秒
絞り値F11
焦点距離38mm

2012年6月20日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2012/20120620.html
カリフォルニア州南部インペリアル・カウンティーの砂漠地帯、レナード・ナイト(1931-2014年)というひとりの男によって色鮮やかにペイントされたサルベーション・マウンテン(Salvation Mountain)は、SNSで近年多くの人に知られる存在になった。厳しい環境のため常にメンテナンスが必要なこの小山は、ボランティアグループが保護と維持に取り組んでいる。カラフルなサルベーション・マウンテンは、カラー写真の方が向いていると思うが、GOD IS LOVEと描かれた強いメッセージはモノクロで充分伝えられたので、どちらが良いとは一概に言えないと思う。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ4704 × 3136
ファイルサイズ8.7MB
photo property details
カメラSIGMA SD1 Merrill
レンズSIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモードスタンダード
シャッター速度1/125秒
絞り値F9.0
焦点距離18mm

2013年11月20日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2013/20131120.html
北カリフォルニアのシャスタ山南西にある湖で行き先を迷っていると、湖へ水を汲みに来た若い女性に出会った。女性は私の探していた場所へ案内してくれたが、そこはあまり絵にならなかった。「少し登った場所で独りキャンプをしているから見に来る?」と女性が言うので、女性の後に付き道なき岩の斜面を登ると開けた土地に出た。周辺に熊が時より出没するそこには一本の松の木が地面を這うように生えて枝の奥にテントが見えた。女性は龍に見える松が気に入り、ここにテントを張ったと言った。女性が松の木に腰をおろし気持ちよさそうに陽の光を浴びている写真は、モノクロも気に入っているが、カラーでは色褪せ始めた晩秋の色と柔らかい午後光を意識して再現像した。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ4704 × 3136
ファイルサイズ15.5MB
photo property details
カメラSIGMA SD1 Merrill
レンズSIGMA APO 50-150mm F2.8 EX DC OS HSM
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度200
ホワイトバランスオート
カラーモード風景
シャッター速度1/500秒
絞り値F4.5
焦点距離82mm

2014年1月22日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2014/20140122.html
晴れの日には、富山県の雨晴海岸(あまはらしかいがん)から西の方角に立山連峰が見える。この日は水分を多く含んだ重い雪がぱらつき、冷たい空気と温かい海面の温度差で生じる気嵐(けあらし)が立ち込め、遠くの景色はよく見えなかった。富山湾から吹き抜け上げてくる冷たい風に身も心も引き締まり、北の方を眺めていると、黒い傘を差したひとりの男性が富山湾沿いに敷かれた氷見線(ひみせん)の線路脇を歩いて来た。能登半島を巡る旅のスタートとしてはあまりにも寒々しいこの光景は、色のないモノクロ向きだと思ったが、カラーでは寒々しい冬空の薄い青が出せたのが良かったと思う。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ4704 × 3136
ファイルサイズ7.7MB
photo property details
カメラSIGMA dp0 Quattro
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモードティールアンドオレンジ
シャッター速度1/250秒
絞り値F11
焦点距離14mm

2015年9月2日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2015/0902/
ロサンゼルス郡南西部のパロスバーデス半島西端付近の海岸は、歩き難い岩場が続き座礁した船の残骸が散在する。1961年3月13日、バンクーバーからロサンゼルス港に向かっていた乗組員81名に小麦と牛肉を積んだSS Dominatorは、濃霧のため岩場に座礁した。岩場から海に浮ばせようと試みたが、強風と高波で作業は難航し、二日後、乗組員は、全長134.4m、幅17.4m、載貨重量10,856tの船を見捨て陸に上がった。SS Dominatorは、第二次世界大戦中、アメリカが大量建造した規格型輸送船のLiberty Shipで、耐久性に問題があり、1941年から1945年間で2,712隻中200隻以上が難破船となった。カラーモードを「ティールアンドオレンジ」にして再現像したカラーは、座礁した船の錆びた残骸、カリフォルニアの青い空が強調され、この場の空気感がより感じられる写真となった。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ5424 × 3616
ファイルサイズ19.9MB
photo property details
カメラSIGMA SD1 Merrill
レンズSIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモード風景
シャッター速度1/200秒
絞り値F8.0
焦点距離18mm

2016年5月12日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2016/0512/
4月中旬、菜の花が咲くシカモア・キャニオン(Sycamore Canyon)の北の尾根を、夕方の光を背にしたランナーが走り抜けてゆく。サンタモニカ・マウンテンズの一部であるシカモア・キャニオンへ来る人は、押し寄せる波の音が聞こえる駐車場に車を停め、緩やかな上りのトレイルを内陸へ向かい進んで行き、また海岸へ戻るのが一般的だが、周辺のトレイルに繋げば独自のハイキングコースが作れるのも魅力だ。シカモア・キャニオンは、何千年もの間、この地域に住んでいた先住民族のチュマシュとトンバにとって、コネホバレーと海岸の間を結ぶ需要な貿易ルートだったから、ここを歩くと彼らの声が聞こえて来るかもしれない。黄色い菜の花を見るとカラーがいいかなと思うが、力強く走るランナーの存在感はモノクロの方が出せたと思う。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ4704 × 3136
ファイルサイズ11.1MB
photo property details
カメラSIGMA sd Quattro H
レンズSIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモードFOVクラシックブルー
シャッター速度1/500秒
絞り値F8.0
焦点距離62mm

2017年8月2日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2017/0802/
オレゴン州最大の淡水湖のアッパー・クラマス・レイク(Upper Klamath Lake)は、長さは約40 km、幅13 kmと大きく、湖面の平均標高は1,260m。20世紀初頭、湖水は農業目的で排水され、湖を取り巻く湿地と沼地は広い範囲に渡り生息地に被害を受けたが、現在は連邦政府により湖の水位はコントロールされ安定している。ニジマス釣りが盛んで、湖西岸の入り組んだ地形には幾つかのクリークがありそこはカヌートレイルになり、湖周辺では細長いカヌーを積んだ車をよく見かけた。カラーでの再現像は、カラーモードを「FOVクラシック」にして湖面のブルーを強調した。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ6192 × 4128
ファイルサイズ18.8MB
photo property details
カメラSIGMA sd Quattro H
レンズSIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモードフォレストグリーン
シャッター速度1/500秒
絞り値F8.0
焦点距離112mm

2018年6月20日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2018/0620/
周囲が8.0kmに満たない祈りの島、神の島と言われる久高島(くだかじま)の北東端を目指し、一本の白い道を自転車が走って来る。沖縄本島の東南端に位置する知念岬の東約5kmの青い海に浮かぶ久高島は、北東から南西方向にかけて細長く最高地点でも標高17mしかなく非常に平坦な島で、沖縄県の天然記念物に指定されている植物の宝庫だ。北東端のカベール岬は、琉球の祖神とされるアマミキヨが天から降りてきた場所と言い伝えられる聖地で、岬へ続く神の道とも言える一本の白い道の周辺には、緑濃い植物群落が広がっている。カラーでは、植物群落を意識してカラーモードを「フォレストグリーン」にして再現像した。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ6192 × 4128
ファイルサイズ20.2MB
photo property details
カメラSIGMA sd Quattro H
レンズSIGMA 28mm F1.4 DG HSM | Art
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモードティールアンドオレンジ
シャッター速度1/250秒
絞り値F8.0
焦点距離28mm

2019年9月4日公開。https://www.sigma-photo.co.jp/oshimoto_photoessay/2019/0904/
アリゾナ州ヤヴァパイ郡(Yavapai County)にあるセリグマン(Seligman)という小さな町には、映画のセットのような店を見かける。オリジナルのルート66沿いにありかつては中継地として栄えたが、州間高速道路40号線が主要道路となってからは観光目的で訪れる人で生きのびている。標高1,598mにある町は一日の寒暖の差が激しく、夏休み入ったばかりのこの朝、薄手のジャケットを着て撮影した。カラーでの再現像で、今年の4月からQuattro機で撮影したRAWデータにも適用できるようになった「ティールアンドオレンジ」をカラーモードに選ぶと、朝陽を浴びた町並みがますますハリウッド映画のセットに見えてきた。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ6192 × 4128
ファイルサイズ22.5MB
photo property details
カメラSIGMA fp
レンズSIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
露出モードM-マニュアル露出
ISO感度100
ホワイトバランス晴れ
カラーモードティールアンドオレンジ
シャッター速度1/1000秒
絞り値F4.0
焦点距離45mm

2020年4月1日公開。https://www.sigma-global.com/jp/special-contents/oshimoto-photoessay/2020/0401/449/
カリフォルニア州最大の湖Salton Sea東岸のボンベイビーチは、最近アート作品が面白いとの噂を聞き、湖へ出かけた。20世紀初頭、農地開拓のためコロラド川から現在のソルトン湖周辺に農業用水を引いたが、1905年に大雨と雪解け水でコロラド川から流れ込む水量が増し水路が決壊した。1907年に堤防がつくられるまでの18ヶ月間、水は現在のソルトン湖がある低い土地へ流れ込み、カリフォルニア州最大の湖が誕生した。この土地は大昔から水に浸されてきたが、ソルトン湖は人為的なアクシデントによって誕生したとも言える。THE ONLY OTHER THING IS NOTHINGの本来の意味は解らないが、数奇な運命を持つ湖に設置するアートに相応しいと思う。モノクロではアート作品の存在感が強かったが、カラーモードを「ティールアンドオレンジ」にして再現像したカラーでは、薄い靄がかかったような湖の存在感が増した。

ダウンロード
ファイル形式JPEG
画像サイズ6000 × 4000
ファイルサイズ15.4MB

モノクロで掲載したタイトル写真の中には、カラーの方が面白かったかなと思う写真もあった。
外での行動を自粛中、過去にモノクロで掲載した写真を見直し再現像してみると新しい発見が沢山あった。今はカラーモードも増えているので、自粛が緩和されてもカラーモードで色々と遊んでみようと思う。

ジョシュア・ツリー国立公園

string(0) ""