第251回

掲載しなかった写真を再現像 / Redevelop photos that were not posted before.

June 10, 2020

カメラ SIGMA SD1 Merrill
レンズ SIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM
シャッタースピード 1/640s
絞り値 F8.0
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 200
焦点距離 287mm
ホワイトバランス モノクローム

2013年2月撮影。
ロサンゼルス郡北部のヴァスケス・ロックス(Vasquez Rocks)と呼ばれる岩場に3匹のサモエドがいた。地震による隆起で独特の岩層をした岩は、映画やテレビシリーズ等の撮影に繰り返し使われてきた。その名はカリフォルニアで最も悪名高い盗賊といわれたティブルシオ・ヴァスケスが身を隠したことに由来する。夏場は非常に暑く、冬でも昼間はかなり気温が上がることがよくある土地なので、シベリアが原産地のサモエドは暑くないのかな?と心配し、高倍率超望遠ズームレンズをしっかりと持ち撮影した記憶がある。
【使用機材】 SIGMA SD1 Merrill, SIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM”

6月に入っても、「首都圏県をまたいでの移動は慎重に」との掲示を見かけ、まだ外出を控え気味の私は、自宅の掃除や整理整頓と過去の写真を見直す時間が増えている。今回は、仕事以外に撮った写真や、何らかの理由で掲載しなかった写真の中から印象に残っている写真を選んで再現像してみた。

カメラ SIGMA DP1
シャッタースピード 1/4s
絞り値 F5.6
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 16.6mm
焦点距離
(35mm換算)
28mm
ホワイトバランス オート

2008年7月撮影。
夏休みにアメリカから帰国し家族で九州へ行った際、印象に残っているのは宮崎県北部の「高千穂峡」だ。五ヶ瀬川へ流れ出した阿蘇の火砕流が急激に冷え、浸食されてできたV字峡谷の上にある「おのころ池」より流れ落ちる水は、日本の滝百選に指定されている「真名井の滝」だ。神話では天村雲命(あめのむらくものみこと)という神様が、この地に水がなかったので水種をここに移し、これが天真名井として湧水して滝となったといわれている。当時としては、コンパクトなカメラにAPS-Cサイズセンサーを搭載したことが驚きだったDP1で、日本を代表するパワースポットを切りとったがつい昨日のように感じる。
【使用機材】 SIGMA DP1

カメラ SIGMA SD15
レンズ SIGMA 18-250mm F3.5-6.3 DC OS HSM
シャッタースピード 1/320s
絞り値 F8.0
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 88mm
焦点距離
(35mm換算)
149mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード ニュートラル

2010年4月撮影。
年間平均晴天日数は325日とされ、年平均気温は約19℃のサンタモニカの気候は心地よく、抜けの良い写真が撮れる日が多くよく利用した。この日、サンプル撮影のためにサンタモニカへ出かけた私は、コンパクトな高倍率ズームレンズをSD14の後継機のSD15に付け、ビーチを歩きながら、オールインワンレンズで目についた様々な光景を撮影した。中でもチェーンがとても長いブランコが、青い空と青い海に向かいゆったりと揺れている光景を鮮明に覚えている。女性の服の色もブルーだったのはラッキーだった。
【使用機材】 SIGMA SD1, SIGMA 18-250mm F3.5-6.3 DC OS HSM

カメラ SIGMA DP2s
シャッタースピード 1/400s
絞り値 F11
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 50
焦点距離 24.2mm
焦点距離
(35mm換算)
41mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード 風景

2010年10月撮影。
10月後半の朝、ニューヨーク州南東部、大西洋に浮かぶロングアイランドの東端まで出かけると、強い朝陽を浴びたモントーク岬灯台(The Montauk Point Light)が強い存在感を見せつけていた。1796年に完成しその翌年初点灯されたこの灯台は、ニューヨーク州で一番古く、19世紀の前半、ヨーロッパからニューヨークへ渡る船にとって陸地の位置を示す最も重要な灯台だった。この写真は、太陽が灯台の灯ろう部の後方に来る場所へ移動して撮影した。使用したDP2sは単焦点なので画角のチョイスはなかったが、空を大きく入れて秋の雲が写るこの画角に満足した記憶がある。
【使用機材】 SIGMA DP2s

カメラ SIGMA SD1
レンズ SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM
シャッタースピード 1/250s
絞り値 F11
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 10mm
焦点距離
(35mm換算)
15mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード 風景

2011年12月撮影。
北はマンハッタンビーチ市、南と東はレドンドビーチ市に隣接しているハモサビーチ(Hermosa Beach)は、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の太平洋に面した小さな海辺の市だ。東から西に約15ブロック、北から南に約40ブロックと小さいが、スペイン語で「美しい」という意味の幅広いビーチは、ビーチバレーボールが盛んで、サーファーの姿は風景の一部だ。平均気温は、夏は22°C、冬は13°Cと非常に過ごしやすく、年の瀬が迫るこの日も恵まれた気候を謳歌する人々が沢山いた。当時の自宅から車で15分の距離にある見慣れたビーチを少し違う視点で撮りたくて選んだレンズは、APS-Cサイズデジタル一眼レフ専用魚眼レンズで、今見ても面白い。
【使用機材】 SIGMA SD1
, SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM

カメラ SIGMA DP3 Merrill
シャッタースピード 1/250s
絞り値 F11
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 50mm
焦点距離
(35mm換算)
75mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード ニュートラル

2013年11月撮影。
ロサンゼルスのダウンタウンを流れるロサンゼルス川の川底を自転車が走って来た。川の始まりは、シミヒルズから東に流れてきたベルクリークとサンタモニカ山脈から北に流れてきたアロヨカラバサスの二つの水路の合流地、ダウンタウンから北西へ直線距離で約40kmの地点だ。その後、サンフェルナンドバレー、ロサンゼルスのダウンタウン、ゲートウェイシティーズを通り、ロングビーチの河口までの約80km間を流れている。かつて川は氾濫を繰り返し、流れるコースも河口の位置も頻繁に変わった。今日コンクリートの水路になった川底へ黒人男性はどうやって入ったのだろうか。使用したDP3 Merrillは35mm判換算で75mm相当になり、撮影した橋の上から丁度いい画角だった。
【使用機材】 SIGMA SD1 Merrill

カメラ SIGMA dp2 Quattro
シャッタースピード 1/320s
絞り値 F8.0
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 30mm
焦点距離
(35mm換算)
45mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード ティールアンドオレンジ

2014年7月撮影。
ロサンゼルスのダウンタウンからハイウェイ101を東へ110km進めば、しばらく青い太平洋沿いを眺めて走ることになる。海岸の岩場には、ヒトデ、イソギンチャク、カニ、カタツムリ、タコ、ウニが生息し、12月から5月にアザラシとアシカが見られるスポットがある。またバードウォッチングのデッキやキャンプ場が所々にあり、サーフィンに適した波が押し寄せ、海好きな人にとっては天国だ。ハイウェイと並行して走る列車の線路が海岸との間にある場所では、車を停めて線路に入る人を見かける。列車は頻繁には来ないし見晴らしも良いので危険性は感じなかったが、いつもより急いで撮影した記憶がある。
【使用機材】 SIGMA dp2 Quattro

カメラ SIGMA dp2 Quattro
シャッタースピード 1/25s
絞り値 F8.0
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 200
焦点距離 30mm
焦点距離
(35mm換算)
45mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード ティールアンドオレンジ

2014年11月撮影。
日本帰国中、友人に誘われて長野県の戸隠山の麓に、奥社・中社・宝光社・九頭龍社・火之御子社の五社からなる戸隠神社へ行く機会があった。神社のホームページによると、その起こりは神世の昔、「天の岩戸」が飛来し、現在の姿になったといわれる戸隠山を中心に発達し、祭神は「天の岩戸開きの神事」に功績のあった神々を祀っているとのことだ。戸隠へ着いて最初に有名な杉並木を超え奥社と九頭龍社へ行ったが、参拝客がとても多いのに驚いた。その後に行った宝光社では、晩秋の色に染まった274段という長い階段を上る老人の後ろ姿が記憶に残っている。
【使用機材】 SIGMA dp2 Quattro

カメラ SIGMA SD1 Merrill
レンズ SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary
シャッタースピード 1/400s
絞り値 F11
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 113mm
焦点距離
(35mm換算)
169mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード 風景

2015年3月撮影。
ジョシュアツリー国立公園の特徴は海抜400mから1,800mのモハーヴェ砂漠に生息するジョシュアツリーと巨岩で、人を絡めた光景は巨岩に張り付くロッククライマーをイメージするが、私にしては珍しく、砂漠に咲く植物を観察するグループにレンズを向けた。茎は細長く、春から夏には朱赤色の小さな花を咲かせるフォウクィエリア・スプレンデンスを大きく取り込んだ写真を等倍で見ると、花が非常にシャープに写っている。乾燥した砂漠地帯の一コマを切りとった記憶が鮮明に蘇った。
【使用機材】 SIGMA SD1 Merrill, “SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary”

カメラ SIGMA dp3 Quattro
シャッタースピード 1/125s
絞り値 F7.1
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 50mm
焦点距離
(35mm換算)
75mm
ホワイトバランス モノクローム

2015年4月撮影。
北カリフォルニアにある標高4,322mのシャスタ山は登山家にとても人気のある山で、その周辺は豊かな森、川、滝、澄み切った湖がある自然のパラダイスだ。シャスタ山の麓の町には、ニューエイジの雰囲気が漂うお店を見かけ、パワ−スポットとしても知られる土地だが、大勢の人が押し寄せることがないのがいい。この写真は、4月にシャスタ山の麓(標高1,093 m)にあるモーテルで撮影したものだ。夜から降り出した雪は翌朝までにはかなり積もり、4月にしては季節外れの大雪となり、除雪車が来るまでモーテルから出られなかった。
【使用機材】 SIGMA dp3 Quattro

カメラ SIGMA SD1 Merrill
レンズ SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM
シャッタースピード 1/500s
絞り値 F8.0
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 105mm
焦点距離
(35mm換算)
157mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード 風景

2016年3月撮影。
サザンカリフォルニアのアンテロープ・バレー(Antelope Valley)の春は、色鮮やかなワイルドフラワーが咲き、特にカリフォルニア・ポピーが有名で、毎年この時季は各地から多くの人が訪れる。しかし、この年のカリフォルニアは深刻な雨不足で、元気のいいカリフォルニア・ポピーは期待できないと思い撮影に出かけた。現地に行くと一面に咲くお花畑をなかなか見つける事ができなかった。花のアップをマクロレンズで撮っていると、風で飛ばされないように携帯を握った右手で帽子を押さえる女性の後ろ姿を見かけ、素早く女性にフォーカスして撮影した。使用したマクロレンズは中望遠レンズとしても重宝した。
【使用機材】SIGMA SD1 Merrill, SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art

カメラ SIGMA SD1 Merrill
レンズ SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art
シャッタースピード 1/500s
絞り値 F6.3
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 100mm
焦点距離
(35mm換算)
150mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード 風景

2016年6月撮影。
東西をマヤカマス山脈とヴァカ山脈に囲まれたナパバレーのワインは、1976年にフランス・パリで開催された試飲会の、赤ワインと白ワインの両部門で、ナパバレーのワインがフランスのワインを抑えて1位となって以来、評価が一気に高まったといわれている。冷えた白ワインが美味しい初夏、カリフォルニア州のナパバレーのワイナリーへ撮影に行く機会があり、ワイナリーのオーナーにワイン製造の話を聞き、美味しいディナーの席でワインを沢山いただいた。翌朝、宿泊したゲストハウスのテラスから外を見ると、ぶどう畑が雲海に隠れ山岳地帯へ来たように見えた。
【使用機材】 SIGMA SD1 Merrill, SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art

カメラ SIGMA sd Quattro
レンズ SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM
シャッタースピード 1/500s
絞り値 F8.0
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 10mm
焦点距離
(35mm換算)
15mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード ティールアンドオレンジ

2016年10月撮影。
カリフォルニア州最大の湖は水路が決壊してできたので人為的に誕生したと言える。農業用水が流れ込み塩分濃度が上がり、蒸発する水が多く水位が下がり続けている。かつて湖底だった場所が現れ、そこに立つと悪臭がする。この数奇な運命を持っている湖へ10年通い続けているのは、一時期リゾート地として栄えた時代の廃墟化した建物等、被写体として面白い光景があるからだ。この日は湖の西岸で日の出を迎えた。かつてボートが出入りしていた場所から湖水までかなりの距離があり、湖が縮小しているのがよく分かる。撮影時にはさほど思わなかったが、魚眼レンズの面白さを改めて感じる。
【使用機材】 SIGMA sd Quattro, SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM

カメラ SIGMA sd Quattro H
レンズ SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art
シャッタースピード 1/160s
絞り値 F7.1
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 24mm
焦点距離
(35mm換算)
32mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード ティールアンドオレンジ

2017年5月撮影。
相模湾に注ぐ森戸川の水量は少なく、引き潮になると河口付近の川底が現れ砂浜と区別がつかなくなる。元暦元年(1184年)、源頼朝公が森戸神社に参拝した際、三島明神から飛来し、河口付近に発芽した伝えられる樹齢800年の御神木である飛柏槙(ビビャクシン)が、川底に下りると海へ向かって突き出た様子がよく見える。この日、陽が昇って間もない時刻に川底に下りてみると風がなく、河口に張られた紐に吊った鯉のぼりがほとんど動かなかった。カラーモードをティールアンドオレンジにすると神社の石垣に当たる朝陽がいい感じに描写され、この朝の空気感の記憶が蘇った。
【使用機材】 SIGMA sd Quattro H, SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art

カメラ SIGMA sd Quattro H
レンズ SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art
シャッタースピード 1/250s
絞り値 F5.6
露出モード M-マニュアル露出
ISO感度 100
焦点距離 37mm
焦点距離
(35mm換算)
49mm
ホワイトバランス 晴れ
カラーモード フォレストグリーン

2019年5月撮影。
令和初日、「令和」ゆかりの地である福岡県太宰府市の坂本八幡宮は、夕方になっても参拝者は途切れなかった。2019年4月1日、平成に代わる新元号は「令和」と発表され、「令和」の引用素となった「万葉集」の「梅花の歌」は、大宰府の長官であった大伴旅人(おおとものたびと)邸で開催された「梅花の宴」で詠まれ、太宰府市にある坂本八幡宮周辺が大伴邸宅跡の可能性が高いと報道された。元号が「令和」になった5月1日、私は羽田から福岡へ飛んだ。普段の参拝客は一日20人程度だったが、この日は1万人ともいわれた参拝者を斜め後ろから撮影した。人の多さに圧倒された記憶が強く残っている。
【使用機材】 SIGMA sd Quattro H, SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

過去に撮影した写真を見直すとその時の記憶が蘇ってくる。撮影時はさほどいいとは思わなかった写真も新しいカラーモードで現像すると見違えるような写真になることもある。外出自粛で自宅にいる時間が多くなっている間に、手つかずの写真を再調整してみると思わぬ発見があるかもしれない。

アンテロープ・バレー

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