第330回
オーエンズ・バレーを北上 / Heading North through Owens Valley
October 19, 2023
カリフォルニア州のオーエンズ・バレーにある巨大な建造物は、大きなものは高さ40mもあり、地元の人々にBig Earsとして知られているオーエンズ・バレー電波天文台だ。カリフォルニア工科大学が運営するこの施設は、電波天文学と天体物理学の研究、次世代の電波天文学者の訓練、最先端の電波機器の開発に貢献している。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
米国で最も深い谷のひとつと考えられているオーエンズ・バレーは、西のシエラネバダ山脈、東のインヨ山地とホワイト山地の間を約120kmにわたって南北に伸びている。西と東の山々は標高4300m以上に達し、シエラネバダ山脈はバレーの雨陰となり、標高1200mのオーエンズ・バレーは年間降水量が152.4mm以下(東京の年間降水量は1528.8mm)の高地砂漠だ。
9月初旬、私は久しぶりにオーエンズ・バレーへ向かった。ロサンゼルスから北上し、東のデスバレーまで104マイル(167km)のサインが立つ国道 395号線沿いにあるCDP(国勢調査指定地域)のオランチャまで来るとオーエンズ湖が右手に広がっている。1913年にオーエンズ川からロサンゼルス上水路へ分流され、1926年までに干上がった白い乾燥湖の横を走る時、オーエンズ・バレーに来たなと感じる。サングラスが不可欠な強烈な日差しの下、更に北上してCDP指定のビッグ・パインで国道 395号線から逸れ、州道168号線を東へ約3.5km走り、そこから舗装された細い道を5.5kmほど北上、この日最初の撮影場所となったオーエンズ・バレー電波天文台に到着した。
高さ約27.5mの電波望遠鏡を見上げて撮影。
電波望遠鏡がつくる影は大きく、強い日差しを容易に避けられた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art
シエラネバダ山脈を背景にしバレーに敷かれたレールを跨いでカメラを構えると、広大なオーエンズ・バレーの谷底にいるのだと実感した。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
電波望遠鏡越しに400mほど先にある別の電波望遠鏡へフォーカスした。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
風の音だけがする乾いた大地に建つ、電波望遠鏡の一部を見上げて撮影。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
小型の電波望遠鏡が雄大な山地を背景に建ち並ぶ。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
電波天文台から国道395号線に戻り、インヨ郡最大の街であるビショップまで北上し、そこから国道6号線をさらに32km北上、Chidago Canyon Rdに入ってから6kmほど北上した後に、Red Canyon Petroglyphsへ到達した。周辺には赤茶色の岩に刻まれた幾つかのペトログリフ・サイトが点在し、政府の土地管理局 (BLM) によって管理されている。それらの岩は、約76万年前のロングバレーカルデラの噴火によって形成された岩が風化したもので、オーエンズ・バレーには火山活動の跡を沢山見る事が出来る。
Red Canyon Petroglyphsからホワイト山地を眺める。
高台で風が強く、陽を避ける樹木もない自然環境の厳しい土地だ。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
一台の車にもすれ違わずに着いたRed Canyon Petroglyphsに人影はなく、ゆっくりとペトログリフを見て回った。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
Red Canyon Petroglyphsから約9km南に位置するChidago Canyon Petroglyphsにも立ち寄った。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
土煙を上げてダートロードを走り2箇所のペトログリフ・サイトを見た後、国道6号線に戻り、州道120号線、Benton Crossing Rdを走り、長さ (東西) 約32km、幅 (南北)18kmのロングバレーカルデラ内に位置するWilly’s Hot Springsという天然の温泉地帯へ移動した。ペトログリフ・サイトからダードロードを走れば50kmの距離だったが、舗装された車道を走りたかったので北へ大きく回ってその分30kmほど多く走り、天然温泉の駐車場に到着すると既に陽は落ちていた。私は天然温泉には浸からず、簡単な夕食を済ませ後、車内ですぐに眠りについた。翌朝、日の出前に車外に出ると消防自動車が停まっていた。仕事前か後か分からないが、地元の消防士も天然温泉を利用しているようだ。
宿泊場所の天然温泉地に向かう途中、州道120号線で見かけた牛の放牧地帯。
この辺一帯は温泉が湧き出ているので、日本だったら温泉宿が何軒も建つかもしれない。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
Willy’s Hot Springsの駐車場に到着すると南の空がピンク色に染まり、天然温泉へ向かう一組のカップルが遠くに見えた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
清々しい朝、天然温泉へ続く木道の先から太陽が昇る。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
この日、オーエンズ・バレーをピンポイントで南から北上した。今までこの広い谷には何度も来て幾つかの場所を撮影したが、地形的にも歴史的にも興味深い場所が沢山あり、谷を囲む山々も季節ごとに違った光景を見せてくれる雄大な谷だと再確認した。
宿泊したWilly’s Hot Springで、澄んだ空気の朝、日の出を撮影。
撮影風景・機材
オーエンズ・バレー電波天文台とペトログリフ・サイトを撮影した様子。