第331回
ベネットビル鉱山トレイル / Bennettville Mine Trail
October 31, 2023
カリフォルニア州モノ郡の鉱山跡から美しい谷底と山々を見渡す。木々の間には1993年に米国森林局によって復元された2つの建物が見える。かつて銀鉱脈の発掘を夢見た人々が集まり、1890年までにゴーストタウンになったベネットビルだ。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
9月中旬のひんやりとした朝、モノ湖南西岸の国道395号線沿いのリー・ バイニングにあるガソリンスタンドで給油を済ませ、スタンドの軒下に設置されたテーブルに着き、ハイキングに向かうグループを眺めながら薄いコーヒーを飲みサンドイッチを頬張った。私はヨセミテ国立公園の東の高地にある鉱山跡まで登るため、前日からこの地に来ていた。リー・ バイニングからトレイルヘッドがあるジャンクション・ キャンプグランドまでは、タイオガ・ロード(州道120号線)を西へ16km走り上った地点にあるが、見落としてさらに4km先にあるヨセミテ国立公園の東口(タイオガ・パス・エントランス)まで走り、そこから引き返しキャンプグランドの入り口にあるパーキング場へ朝8時過ぎに到着した。私は一足先に到着していた老夫婦を追い、リー・バイニング・クリークを渡り、トレイルヘッドに至った。この日のシエラネバダ山脈の東の斜面は快晴だった。雲ひとつない濃紺の空の下、ふんだんに注ぎ込む陽光を浴び、透き通るような澄んだ空気の中を登って行くと自然と笑顔になった。トレイルでは、スタート地点で追った老夫婦の姿はすぐに消え、その後人の姿を見ることはなかった。
トレイルを登り始めてすぐにリー・バイニング・クリークへ注ぐマイン・クリーク沿いに出る。
赤みがかった岩の間を流れるクリークの水量は多く、水の流れる音に身も心も引き締まる。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
トレイルヘッドから1600mほどの距離を登り歩くと、修復された鉱物分析所と飯場の2 つの建物が建っている。鉱山の採掘作業のための基地的なタウンだったベネットビルだ。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
強い陽光を浴びた小さな窓がある建物の外壁。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
復元された建物の中に入るとここで冬の寒さを耐える過酷さが想像出来た。
冬季は深い雪に覆われ、鉱夫を巻き込んだ雪崩の事故も発生した。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
周辺の土地と比べると平坦だが、西側から見ると集落があった土地は北から南に低くなっているのがわかる。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 50mm F2 DG DN | Contemporary
マイン・クリークを渡り、鉱山跡へ向かってトレイルを南へ登る。クリークが流れる谷底を挟んで東にゴーストタウン、西に鉱山のトンネル口があり、鉱夫はこの浅い谷を行ったり来たりした。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
1860年、現在のベネットビル鉱山跡周辺で銀が発見されたが、発見者はその後ネバダ州で発見されたより大きな鉱脈に惹かれ、所有権を得る事無くこの地を去ってしまう。それから15年後、若い羊飼いがこの周辺で銀を発見し、Sheepherder Mineとして所有権を取得したのは1878年だった。その頃にはこの地区に多くの鉱山が存在し、1881年に鉱山会社(Great Sierra Consolidated Silver Company)が所有権を購入しTiogaと改名された。同年春、7,260kgにもなる大量の鉱山設備を現場に運び、鉱山会社の社長トーマス・ベネットにちなんで名付けられたベネットビル・ポストオフィスは1882年から1884 年まで運営された。しかし、銀は生産されることはなく、ベネットビルは1890年までにゴーストタウンとなった。
鉱山トンネルの入り口は東に面し、強い陽光を浴びていた。
鉱山機械を運び込み掘り進んだが、鉱脈は発見されなかった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
重たい鉱山機械を険しい山々を登り下りしてここまで運ぶのは大変な労力だったと容易に想像出来る。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
鉱山のトンネルは入り口から10mほど奥にゲートがありその先には進めない。
私は水が溜まったトンネルに入り、ゴーストタウン方向を見て撮影。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
地図にも記されていない鉱山跡の南西の岩肌を流れ落ちる滝に、シエラネバダ山脈の雄大さを感じた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
標高3,840mのコネス山の南西の麓で、比較的平らな標高約3,000mの土地にベネットビルは存在し、タウンと鉱山の間にはオアシスのような浅い谷があり、そこを流れるマイン・クリークは北西に連なって存在する湖を経て流れ込んでいる。この谷底からマイン・クリーク沿いを登って行くと、連なる幾つかの湖を散策することが出来る。鉱山跡を見て満足だった私はトレイルヘッドに戻り、車で南へ2km南下してタイオガ湖に立ち寄った後、帰路についた。
青い湖面が美しかったタイオガ湖の北岸から撮影。左手に聳える山は、標高3,981mのダナ山(Mount Dana)。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 17mm F4 DG DN | Contemporary
リー・ バイニングから上ったタイオガ・ロードは、元々鉱山に物資を運ぶため、1882年に鉱山会社によって130日をかけて建設されたグレート・シエラ・ワゴン・ロードだ。最初の目的を果たすことはなかったが、この道はヨセミテ渓谷の北を東西に走り、カリフォルニア州で最も標高の高いポイント(標高3,031mのタイオガ・パス・エントランス付近)を通過する有名な道路のひとつになった。例年11月から5月、年によっては6月中旬まで積雪のため閉鎖されるので、次回この地に来る機会が初夏であれば、ベネットビルの更に上へ登り、幾つかの湖が続く高地を散策してみたい。
水量が多いクリーク沿いのトレイルとタイオガ湖を動画で撮影。