第186回:森戸海岸の夏の終わり
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第186回:森戸海岸の夏の終わり

神奈川県三浦郡葉山町にある森戸神社は、治承4年(1180年)9月8日創建とされる。創建の記念日である9月8日は毎年例大祭が行われ、今年も神輿が海に入って行った。その動きのある光景を追うのには標準ズームがとても役に立った。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:28mm

15年ぶりに体験する日本の夏は湿度の高さに参ったが、飲もうと思っていたビールも食べようと思ったかき氷も体験しないまま海の家が終ってしまったのは残念だった。8月最後の日、森戸海岸は強い風が吹き、海は荒れ砂が舞い、夏場には見える日が少ない富士山が見えた。9月に入ると朝晩は過ごしやすくなり、エアコンをつけっぱなしの夜から開放され夏の終わりを感じた。

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8月最後の日の夕方、富士山の頭が見えた。全体像が見えないので富士山の雄大さが強調され、鳥居が建つ名島に打ち付ける波は富士山の威厳を示していた。強風だったが、コンパクトな望遠ズームは風の影響をあまり受けず快適に撮影できた。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:160 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/1600 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:227mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:11.18MB

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9月に入った朝の空気に夏の終わりを感じた。背景に見える相模湾と江ノ島のぼけ具合は、高倍率なズームレンズとしては大満足だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:45mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:14.19MB

9月に入って海の家の撤去がほぼ終わった森戸海岸は、遊びに来る人の数が減った。このまま静かな海になるのかな?と思ったが、森戸神社で祭があり海岸は7日と8日は賑やかだった。創建記念日である9月8日は神社にとって最も重要な祭りである例大祭で、前夜とその夜は境内で神事が行われた。私は時間がなく海岸で神輿を見るだけだった。

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名島に建つ鳥居にフォーカスし、光る海面を背景にした手前の若い女性たちをぼかす。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:220mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:10.58MB

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砂浜に竹の鳥居が建てられた。微かに透けて見えた紙垂(しで)にフォーカスし、モノクロにして色調はブルーを選んだ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:100mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:10.44MB

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神輿が竹の鳥居をくぐり抜けていく。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:15.52MB

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真名瀬町会の神輿だけが海の中へ入って行く。後方には森戸神社本殿の屋根、岩の上に生える千貫松(せんがんまつ)が見える。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:46mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:16.25MB

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神輿はかなり深いところまで入って行った。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:31mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:14.41MB

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海から戻ってくる神輿。流れのあるシーンを追うのに標準ズームレンズは欠かせない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:15.70MB

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子供を抱いた母親が砂浜に戻ってきた神輿の下をくぐる。子供の無病息災を祈る「神輿くぐり」と呼ぶそうだ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:13.23MB

9月に入って2回目の週末は快晴に恵まれた。海水浴に来る人はかなり減っていたが、マリンスポーツを楽しむ人で森戸海岸は賑わった。夕方、森戸神社の境内へ行くと参拝客がまだ訪れていて、境内裏には15人ほどの人が海を眺めていた。永暦元年(1160年)、平治の乱に敗れ伊豆に流された源頼朝は、三嶋明神(現、静岡県三島大社)を信仰し源氏の再興を祈願した。1180年に鎌倉に入った頼朝は三嶋明神を勧請し、鎌倉に近い葉山に森戸神社を創建したとされる。

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スタンドアップパドル(SUP)の人気は上がっているようだ。手前の浮き輪で浮く3人組は外国の人。森戸海岸の夏は外国人の姿もよく見かけた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2000 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:252mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:18.16MB

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営業中と書かれた貸しボート屋の旗が風にバタバタと音をたてていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2000 秒 | 絞り値:F4.5 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:16.45MB

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大学のヨット部が次々と海へ出て行った。肉眼では帆は眩しい白にしか見えなかったが、写した画像では帆の縫い目まで細かく読み取れる。解像度の高い単焦点レンズは肉眼には見えないものを写し出す。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2000 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:15.98MB

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引潮で森戸川の河口の半分以上が砂浜になった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:12.86MB

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森戸神社の境内横から河口へ向かって生える樹齢800年の飛柏槇(ひびゃくしん)は神社の御神木だ。元暦元年(1184年)に源頼朝公が参拝した際、三嶋明神から飛来し発芽したと言い伝えられている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:18mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:15.58MB

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水深30センチほどの河口にエイがゆっくりと泳いでいた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:31mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:17.39MB

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境内に積まれた酒樽に夕方の光が差し込む。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:19.23MB

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子宝石納所が夕陽に染まっていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F2.8 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:14.91MB

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境内の裏の小山に続く鳥居に夕陽が当たり神秘的だった。階段を登る女性は鳥居をくぐらず階段左の草むらから来たと思うが、鳥居を狙ってフレーミングした私の目には何処からともなく現れたように見え不思議な光景だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F3.5 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:24.70MB

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超広角レンズで大きく写したくなる神社裏の風景。岩上に生える松の木は千貫松(せんがんまつ)と呼ばれる。源頼朝が衣笠城に向かう道中に休憩した際、岩上の松を褒め、出迎えの和田義盛が「私たちは千貫の値あるので千貫松と呼んでいる」と答えたと言い伝えられている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:22.48MB

8月の森戸川河口付近は、バーベキューをしに来た人々が朝早くから沢山の荷物を持ち、みそぎ橋を渡る姿を見た。9月に入ると朝早くからみそぎ橋を渡るのは、犬連れの数人を見るぐらいで、森戸川の河口は静かになった。森戸海岸は鎌倉時代に七瀬祓の霊所と定められ、砂浜ではみそぎが行われ神聖な場所だった。賑やかな夏が去り、神聖な土地の静けさが戻って来たように思えた。

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海水が満ちてきた森戸川の河口。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:23.33MB

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河口から森戸川にかかる「みそぎ橋」を見る。昇って来た朝の太陽が眩しい。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:10.60MB

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引潮時の森戸川河口付近。朝陽が逆光になりシラサギが美しかった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:600mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:19.29MB

森戸海岸は雪を被った富士山が見える冬が一番好きだが、富士山が見える日が少ない夏もいいものだ。8月最終日に強風が吹いたが、あれは多くの人が訪れ賑わって汚れた海岸の掃除だったのかもしれない。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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