第296回
春の富士宮へ / Fujinomiya in Spring
April 20, 2022
富士山の西麓に位置する田貫湖(たぬきこ)周辺の桜は満開に近づいていた。田貫湖はもともと狸沼と呼ばれた小さな沼地だったが、1923年に起きた関東大震災の影響により芝川の流水量が激減し、農業用水の確保のため1935年から始まった堤防建設で人造湖となった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
2年前の8月末、静岡県富士宮市の白糸の滝周辺を散策した日は富士山が雲に覆われて見えなかったので、桜が咲き富士山が見える春に再訪問したいと思っていた。
晴れ時々曇りの予報だった4月の第2土曜日、翌週の天気は下り坂だったので、桜と富士山を期待し富士宮へ向かった。最初に立ち寄ったのは2年前に通りすがりで見つけた上層農家の井出館。ここは建久四年(1193年)、源頼朝が富士の巻狩の際に宿所を置いた場所で、敷地内には頼朝が馬をつないだといわれる「狩宿の下馬桜」が生存している。この桜は樹齢800年以上で、国内最古級の学名アカメノシロバナヤマザクラという国の特別天然記念物に指定されている。当時の建物は江戸時代中期に焼失し、現存する井出館は江戸時代中期に建てられた。井手館に朝7時に到着したが、この日は桜のイベントでまだ三分咲きの「狩宿の下馬桜」前には大きなテントが張られ、関係者も見物人も既に多く撮影には最適な日ではなかった。
朝陽が透過光になり風になびく井出家の門幕。
屋敷の一部は「井出家高麗門及び長屋」として富士宮市の指定文化財にリストされている。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
井手館の水田近くで見かけた白いツバキの落花が朝陽に染まっていた。
まだ早かった桜の代わりにレンズを向けた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
桜はまだ早くイベントも重なった井出館には長居はせず、2年前にも撮影した朝日滝へ向かった。滝に到着すると正面から朝の日差しを受けた落差20mの滝が勢いよく流れ落ちていた。滝周辺には桜が咲き、滝の駐車場からは雪を被った富士山が鮮明に見えた。
前回来た時は影になっていたが、この朝は陽光をたっぷり浴びた朝日滝だった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
滝の横にある急な階段を上がり、滝の上部に近づき滝を見下ろす。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
桜越しに朝日滝にフォーカスした。富士菊桜という品種の桜の木が植えられていると側の看板に書かれていたが、私には富士菊桜か見分けがつかなかった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
桜と富士山がはっきり見える春の日だった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
朝日滝からは、富士山の湧水で育てる「白糸コシヒカリ」が栽培される平成棚田に立ち寄った。まだ土色の部分が多かったが、水張りがされた部分ではカエルの鳴き声が聞こえた長閑な棚田から、富士山麓に降った雨水が湧き出している白糸の滝へ移動した。
一部を除き大部分は水張りがまだされていない平成棚田。老人がテンポよく歩いて行った。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
落差20m、幅150m、水量毎秒1.5トンと言われる白糸の滝を西側の展望台から撮影。
少し雲がかかったが富士山が見え、虹が出てくれたのはボーナスだった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
白糸の滝では富士山が見える西の展望台で撮影した後、滝から北上して湖面標高660mの田貫湖へ移動した。湖に到着すると駐車場は満車だったので、空きが出るまでしばらく待った。桜は五分咲きとの情報だったが、湖岸に咲く桜は満開に近いように見えた。東西1km、南北0.5km、周囲3.3kmの湖の湖岸には沢山の釣り人と大勢の観光客で賑わい、三脚を立てて撮影するのは気が引けた。
雲が増え富士山が少し霞んできた田貫湖。
暖かい春の日だったが、太陽が雲に隠れ風が吹くと少し肌寒かった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
規則正しく波打つように流れてくる田貫神社脇の用水路。人工湖の周辺は色々な工夫がなされている。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
大勢の観光客と釣り人で賑わっていた田貫湖から、長閑な平成棚田へ再び戻ると水張りされた田に富士山が映り込み、棚田の脇に咲く花桃が午後の光を浴びていた。「平成棚田 ノルディックウォーキングコース」のコース上に位置し、開放感のある棚田の近くには森があり、森の中にはひっそりと佇む小さな集落があった。特別なものはなかったが、小さな畑があり、小川が流れ、鳥が鳴く集落は落ち着く空間だった。
広い画角を活かし、下から見上げ大きく空を入れ、ピンク色の花桃と富士山を撮影。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary
静岡県の富士宮市で、上層農家の屋敷、滝、棚田と集落、湖等を散策した春の日を動画撮影。
この日は森に囲まれた集落で撮影を終わりにし家路についた。井出館の「狩宿の下馬桜」はまだ早すぎたが、2年前の夏(第257回)に来た時は全く見えなかった富士山がはっきりと見え、桜や桃の花を絡めて撮れた場所もあり満足できる一日だった。