第151回:ワイルドフラワー咲く春のランカスターへ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第151回:ワイルドフラワー咲く春のランカスターへ

さわやかな春の草原を親子が歩く光景を超望遠ズームレンズで捉える。サザンカリフォルニアのアンテロープ・バレー(Antelope Valley)の春は、色鮮やかなワイルドフラワーが咲く。特にロサンゼルス群のランカスター周辺は、カリフォルニア・ポピーが有名で、毎年この時季の週末は各地から人が集まって来る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:不明 | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:275mm

この数年、カリフォルニアは深刻な雨不足で、カリフォルニア・ポピーの保護区の丘もポピーの花が咲き乱れるという感じではないようだ。干ばつは野草への影響だけに留まらず、昆虫の主要な食料源が減り小動物も影響を受け全ての食物連鎖に繋がる。しかし、今年の冬はエルニーニョの影響で雨量が多く、ワイルドフラワーも昨年より早目に咲き出したと聞いていた。3月最後の週末、カリフォルニア・ポピーが有名なロサンゼルス群のランカスターへ向かった。春のランカスター周辺は何度か訪れたことがあり、ポピーを求めてランカスターの街から西へ走ったが、この日はまだ見ていないエリアを求めて西から東へ走った。まだ暗いランカスター・ロードに入ると、車のヘッドライトで荒野にポピーが咲いているのが確認でき、そこで日の出を待った。

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ランカスター・ロードに入り日の出を待つ。かなり冷え込んでいて風も強かった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:8.97MB

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太陽が地平線から顔を出した瞬間は、眩しくて荒野に咲くポピーはよく見えなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:11.01MB

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朝陽がアンテロープ・バレーに届き、西の空には沈んでゆく月が浮かんでいた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:不明 | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
ファイルサイズ:11.63MB

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朝陽を受け、まだ開いていないポピーはチューリップにも見えた。ポピーの目線になって低い位置から撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:10.23MB

日の出前はかなり冷え込んでいたが、朝陽に照らされ始めると気温が上がり手袋なしで行動できるようになった。ポピーを撮った場所から約1200m東へ行くと涸れ川があり、そこには紫色のルピナスが咲いていた。涸れ川に出てルピナスの群れまで100mほど歩く。まだ冷たい砂地の涸れ川に座り込んでルピナスに独り向い合うと、どこからともなく高い鳥の声は聞こえてくる。念のため超望遠ズームレンズをカメラに装填するが、遠くに沈んでゆく月がルピナス越しに見えるだけで鳥の姿はどこにも見えない。

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ルピナスが群を成して咲いていた。暖かい朝陽を浴びて紫色に見えたが、昼にはもう少し青く見えると思う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:18.49MB

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ルピナスのアップ。風に揺れていたがしっかりとした花は比較的撮りやすかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:105mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
ファイルサイズ:9.57MB

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家を出てから一緒だった月が消えようとしていた。鳴き声がする鳥を撮るために用意した超望遠ズームレンズでルピナス越しに月を捉えてみた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:302mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:8.08MB

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周囲の丘は黄色いゴールドフィールドに包まれていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:252mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:23.59MB

ルピナスが咲く涸れ川から800mほど東へ行き水路を渡ると、北の方に黄色い花に囲まれたサイロが見えた。ダート道をゆっくりと500mほど走り近づいてみると、黄色い花のゴールドフィールドが一面に咲き開き始めたポピーも咲いていた。

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北から流れてきた水路(California Aqueduct)が朝陽に輝く。乾燥した土地では水が宝ものに見え、水面に眩しく反射する朝陽にエネルギーを注入される。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:17.35MB

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サイロの周辺は黄色いゴールドフィールドとポピーが咲いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:20.04MB

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朝陽が当たりポピーが徐々に開いてきた。上から見るとゴールドフィールドに囲まれたポピーが主役に見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
ファイルサイズ:19.05MB

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風に揺れるポピーとゴールドフィールドは踊っているように見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:15.65MB

ポピーとゴールドフィールドのお花畑からさらに東へ走るとアンテロープバレー・カリフォルニアポピー保護地区はすぐだった。ランカスター・ロードから、海抜790mから910mの丘陵地帯にある保護地区にカーペットを敷き詰めたように咲くポピーは見えてこない。昨年も保護地区のポピーは思ったより多くはなかったので、この日は保護区に立ち寄らず、昨年沢山ポピーが咲いていた道(Munz Ranch Rd)沿いの農地に行ってみたがポピーはほとんど咲いていない。さらにその道を南下し、丘陵地帯のワイルドフラワーが素晴らしいとの情報を得ていたエリザベス湖の手前まで走った。海抜973mの湖北岸の丘は、下から中腹にかけて色鮮やかなワイルドフラワーが見事に咲き大勢の人が集まっていた。

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その名前の通り青い空を背景にしたポピーのフィールドを見たかったが、ポピーの花はほとんど咲いていなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 12-24mm F4.5-5.6 II DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:不明 | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:15.33MB

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Poppy Field Ranchから少し南の丘にワイルドフラワーを見かけはじめた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:22.09MB

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エリザベス湖手前の丘陵地帯は、情報通り見事なワイルドフラワーが咲いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:105mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:13.24MB

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急斜面を登る人々が向こうに見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:22.32MB

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丘陵地帯の上の方はポピーがほとんど咲いていなかったが、Fremont Phacelia(ハゼリソウ)に囲まれたポピーが少しだけ咲き、その存在感が際立っていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:18.29MB

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花と一緒に記念写真を撮る家族連れも多く集まっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
ファイルサイズ:23.77MB

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眩しい花いっぱいの丘陵地帯に腰を下ろす。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:不明 | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:19.90MB

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風で揺れてその形が安定しないポピーの花。風が弱まった僅かな隙に大口径中望遠マクロレンズを手持ちで撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:105mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:7.22MB

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強烈な太陽光下、肉眼では真白に見えたポピーは黄色味がかっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:105mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
ファイルサイズ:7.36MB

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黄色、オレンジ色、紫色の花と青い空は正にカリフォルニアの春だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
ファイルサイズ:25.61MB

期待以上の見事なワイルドフラワーが見られ大満足した私は、風が強くなり花粉で少し目がかゆくなってきたこともあり、ランカスターに日没まで居座らなかった。自宅に向かいランカスター・ロードを東へ走り始めると黄色い花が一面に咲くフィールドがあり、素早く飛び回る白い蝶を数匹見かけた。黄色いゴールドフィールドが咲く荒野に出てしばらく蝶を追い回したが、1秒たりとも花に留まらない蝶を撮るのは不可能だと思った。諦めかけたその時、どこからともなく飛んで来た蝶が私のすぐ側に留まった。ほんの数秒の出来事だったが、とてもラッキーだった。

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風も強く、私の目の前で蝶が留まるのは奇跡的なことに思えた。大口径望遠マクロレンズを活かして捉えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:180mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:14.05MB

春のワイルドフラワーを見に来たが、最後に花から花へと飛ぶ蝶を撮ることができた。花が咲かないと生きられない生物がいるのだと教えられたような気がした。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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