草原に建つ小屋が朝陽を受けて輝く。海抜2,000m以上の草原は、冬は雪に閉ざされる。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:27mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704
ファイルサイズ:9.05MB
押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。
オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/
廃線となった鉄道のトンネル内に入ると、ひんやりとした空気に身が引き締まった。シエラネバダ山脈北部、標高2,151mのドナー峠周辺は有数の豪雪地帯だ。西部開拓史上、最も悲惨といわれる遭難事故が起きた難所だったが、今日、春から秋にかけてはロック・クライマーとハイカー、冬はスキーヤーが訪れるリゾート地としても知られている。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:2 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:18mm
シエラネバダ山脈東の標高2,000mの山麓で夜を越した私は、真夏とは思えない冷え込みに目をさまし、陽が昇る少し前にハイウェイ395号を北上した。走り出して間もなく、標高4,000m近い山の上部が朝陽で赤くなり、空は青くなった。澄んだ朝の空気を吸い込むと、この日も快晴の夏日になると確信した。私は、カリフォルニア州東部を縦貫するシエラネバダ山脈南端から中部付近の周辺は何度も訪れていたが、北部には馴染みがなかった。この日、大陸横断鉄道がシエラネバダ山脈をはじめて越えたトンネルが残るシエラネバダ山脈北部のドナー峠へ向かった。
カリフォルニア州東部を650㎞に渡り縦貫するシエラネバダ山脈に朝陽が届きはじめる。
使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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標高1,946mのモノ湖の湖面にはまだ朝陽が届かず、真夏でもこの時刻は肌寒かった。
使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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標高2,482mのコンウェイ・サミット付近から、シエラネバダ山脈を見る。中央の二つの山はダンダーバーグ・ピークで、高いほうが標高3,772m。
使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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小さなタウン、ブリッジポートを過ぎると草原が広がっていた。冬場、雪に覆われる草原では牛が草を喰み、空が映り込む青いクリークが流れ、さわやかな風が吹いていた。花崗岩の岩山を越え、シエラネバダ山脈の標高3,000m から流れてきたウエスト・ウォーカー・リバー沿いを北上しても草原は続いていた。小さなタウン、ウォーカーを通り過ぎると、火災の消化作業中に命を落とした消防士の記念碑があり、数日前、ロサンゼルスの北で起きた山火事を思い出した。乾燥している夏は山火事がいつ起きてもおかしくなく、この日も「山火事の可能性が高い」と表示されたサインを何度か見かけていた。
緑豊かな草原にたくさんの牛がいた。用心深そうに見つめてきた牛の眼に、大口径望遠レンズでフォーカスした。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 70-200MM F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:157mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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シエラネバダ山脈の雪解け水が流れるクリークは青く、空気は澄み渡り実に爽やかな朝だった。
使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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北のトパーズ湖に注ぐウエスト・ウォーカー・リバーはかなりの急流だった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:9mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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山火事の消化に使われたと思われる飛行機のモデル。赤いリボンが付けられ風になびいていた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:29mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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どこまでも続く草原は標高が高く、強い陽射しの割に暑さは感じない。
使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:19mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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北上していくとカリフォルニア州とネバダ州にまたがるトパーズ湖の西岸に出た。私は水辺の涼しげな風景に一息つき、少し休んでからネバダ州に入り、タホ湖の東岸に到達した。湖周辺の山沿いにはいくつもスキー場があり冬のリゾート地として有名だが、真夏のこの日、湖岸の駐車場はどこも満車で、湖岸には多くの人を見かけ、湖面には様々なボートが浮かんでいた。私は狭い路肩に車を停めたが、人出の多いタホ湖周辺に長居はしなかった。
ウエスト・ウォーカー・リバーが流れこむ貯水湖であるトパーズ湖の南半分はカリフォルニア州に属する。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 70-200MM F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:91mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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面積490平方キロメートル、湖面の標高1,897m、最大水深501mのタホ湖周辺は、山に囲まれ美しいパノラマが望める。
使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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タホ湖は透明度が高く、東岸の斜面から見下ろすと湖岸付近も非常にきれいだった。
使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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タホ湖東岸から北岸へ走るとネバダ州から再びカリフォルニア州に戻った。そこから北西へ走り、東西に長いドナー湖北岸に到達した。タホ湖を見て来たばかりの者には、ドナー湖はかなり小さく見える。北岸沿いのドナー・パス・ロードを西へ進み、道は曲がりくねりながら上って行くと、面積3.4平方キロメートルのドナー湖が一望でき、間もなく目的地のドナー峠へ到着した。路肩を広げた小さな駐車場に車を停め、花崗岩の急坂を登り、かつて線路が敷かれていた平らな土地に出た。
峠の花崗岩の斜面から標高1,809mの高さにあるドナー湖を見る。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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線路の跡はなく、車も通れるような道に見える線路跡。夏休みの週末のため、ドナー・サミット・トンネル内を歩くハイカーは多かった。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:10.31MB
大陸横断鉄道がシエラネバダ山脈を越えるため、15ヶ月を要したトンネル工事は主に中国人労働者で行われ、1867年8月に完成した。1868年の6月18日に最初の旅客列車が通過し、1993年にルートが変わりこの区間は廃線となった。私は、岩の斜面を登りトンネルとトンネルの間に出ると、東側のトンネルに入った。トンネル内はとても暗い部分もあり先が見えなかったが、雪崩避けカバーで囲まれた部分には外部からの光が所々に漏れ、トンネルの外に出られる出入り口もあり、ライトなしでも歩けた。40分ほど歩くとトンネルの切れ目に出てそこから引き返し、西の二つのトンネル内を歩いて引き返した。太陽が傾き気温が下ったせいか、トンネルに入る前には見なかったロック・クライマーが岩壁に張り付いていた。
落書きが多いトンネル内を歩く。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:3.2 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:19mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:7.54MB
線路が敷かれていた山の斜面を保護する壁はチャイニーズ・ウォールと呼ばれ、ロックを手で積み上げ、ロック間には漆喰等は使われていない。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:11mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:13.68MB
トンネル歩きを終え岩の斜面を下りる際に見かけたロック・クライマー。青いドナー湖から気持ちのいい風が吹いてきた。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:260mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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大きな岩の壁に張り付くロック・クライマーたち。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:32mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
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駐車場に戻り、宿泊道具を積んだワゴン車から出てきた女性と話した。彼女は明日の朝早くから岩を登ると言う。私は、緩やかな傾斜があり大きくカーブしたドナー・サミット・ブリッジを渡り、よく整備されたハイウェイ80に入りシエラネバダ山脈を東から西へ越えた。
1920年代に入ると車が交通手段の主になり道が建設されたが、ドナー峠の傾斜がきつすぎたため、緩やかな傾斜とカーブのある長さ約73mのドナー・サミット・ブリッジが掛けられた。材料はドナー湖近くから運ばれ1926年に完成した。
使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:11mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136
ファイルサイズ:8.43MB
ドナー・サミット・ブリッジを渡り少し上ると、ドナー・サミット・トンネルとドナー湖の位置関係がよく分かる絶景があった。
使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:15.42MB
1846年の春、現在のカリフォルニア州のサクラメント付近を目指し、イリノイ州を出発したドナー隊と呼ばれる開拓団が、フレモント峠(現在のドナー峠)付近に到達したのは同年の10月末だった。例年より一月早い積雪で、ドナー隊は峠を越えられずトラッキー湖(現在のドナー湖)の東に引き返し、翌年の春まで冬越えを強いられた。食料は尽き、幾人かは雪の山脈を越えて救助を求めたが、旅の途中で加わったメンバーを入れ、90名近くになっていたドナー隊で、半数近くが旅の途中で命を落とし、その殆どが雪山で亡くなった。生きて峠を越えた者の多くは雪山でカニバリズム(人肉食)に走り、西部開拓史最も悲惨な遭難事故と言われている。ドナー隊の遭難事故から20年後の夏、ドナー・サミット・トンネルが完成した。その翌年6月には旅客列車が峠を通過した。今日、車でハイウェイ80を走れば簡単にドナー峠を越えられるが、峠周辺のトレイルを歩くと、西部開拓時代のパイオニア精神が少しは感じ取れると思う。
※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。