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ありのままの感情を捉え、
新たな視点を与えるレンズ

ART
35mm F1.2 DG II
Impression

by アビゲイル・スティード | Abigail Steed

Sigma 35mm F1.2 DG II | Artでの撮影依頼を受けたときは、本当にワクワクしました。

私はこれまでも長年にわたって、個性的かつ印象的な写真を撮影するために様々な大口径レンズを使ってきましたが、F1.2という明るさをもつ35mm(私のお気に入りの焦点距離)のレンズを使ったことはこれまで一度もなかったからです。

私はいつも「カメラではなくレンズこそが写真を決定づける」と考えているので、このレンズを私のSony α7シリーズのボディに装着して撮影をスタートさせるときは心が躍りました。

冬のイギリスは日照時間が短く撮影条件は厳しいものになるため、撮影は室内と屋外の両方で行うことにしました。

このレンズは被写界深度が非常に浅いので、撮影においてピントをシャープに合わせることに少し緊張しました。

大口径レンズを開放で使ったことがあるならご存じの通り、こうしたレンズはピントの許容範囲が極めて狭いためです。でも、そんな心配は無用でした。

このレンズを使った撮影、そして、実際に撮った写真を見返したときの喜びは素晴らしく、満足度の高いものとなりました。

写りは非常にシャープ。 F1.2によるピント面は極めて浅いですが、背景はとても美しくとろけるようにボケてくれます。
だからこそ、完璧にピントを合わせるためにじっくりと時間をかけるだけの価値が、十分にあると感じました。

私は静止した被写体と常に動き続ける被写体での使い心地の違いを試すため、あえて飼い犬たちや静物写真も撮影してみました。

特に動く被写体をこれほど明るいレンズで撮影したのは初めての試みでしたが、仕上がった写真の美しさには本当に感動しました。

私は、被写体とその場の空気が感じられるようなポートレート撮影が好きです。
特にウェディングの撮影の場合は常に光量が少ない、あるいは照明の条件が厳しい屋内の撮影であることが多く、そこではレンズの明るさの一段一段がとても重要になってきます。

今回の撮影では少し基本に立ち返り、何気ない場面やモノの美しさに意識を向けてみました。
このレンズが描き出す、まるで被写体に命を吹き込むような深い情感があれば、それが可能だと思ったからです。

特に被写体に近寄って撮影したときに得られる絵画的な描写は、私がSigma 35mm F1.2 DG II | Artにおいて特に惹かれたところであり、このようなレンズでなければ、決して得られない「味」だと思います。

このレンズで何より私が気に入った点は、ありふれた普通の写真に、優美で幻想的な雰囲気をまとわせることができる、その感覚でした。

写真は、私にとって生活の糧であるだけでなく、自分のクリエイティビティを表現する手段としても、非常に重要なものです。

ウェディング業界は常に変化が激しく、クリエイティビティを自由に発揮できる余地は限られています。なぜなら、常に時間はタイトで、写真撮影そのものは自分のためではなくクライアントのために行うからです。

このレンズは、ポートレートだけでなく、ウェディングの撮影でも非常に重宝すると思います。特に、穏やかで静かなシーンをじっくりと時間をかけて美しく撮影したい時や、ふとした何気ない瞬間を芸術として昇華させたい時などに大いに活躍するでしょう。

今回の撮影はほんの短い時間でしたが、これこそ私がこれまで必要としていたレンズだと強く感じました。
仕事の現場でこのレンズを使うことで、これまでとは違う新たな手法や視点で撮影に臨めることが楽しみです。新しい視点をもつということは、いつだって歓迎されるべきことですから。

ABOUT

アビゲイル・スティード|Abigail Steed

ウェディング・フォトグラファー/ポートレート・フォトグラファー

英国を拠点として、国内外のウェディング撮影を中心に活躍するフォトグラファー。写真家としてのキャリアは14年以上にわたり、飾り気のないドキュメンタリースタイルのウェディング写真やクリエイティブなポートレートを得意としている。