インプレッション

この瞬間を生きる

ART
35mm F1.4 DG II

by エリオット・オービン|Elliot Aubin

私はポートレート写真家として10年以上活動してきましたが、振り返ると、年齢を重ねるごとに自分の作品も進化してきたと感じています。時とともにものを見る目は確かさを増し、本当に自分らしいと感じられる表現へと、自然に近づいてきました。
選ぶ機材や構図の組み立て方、そして撮影へ向き合う姿勢もまた、私自身の成熟と経験とともに、徐々に変化してきました。
これまで経験してきたすべての撮影プロジェクトが、自分が何を表現したいのか、それをどのように伝えたいのかを、より深く理解する手がかりとなってきたのです。
年月を重ねる中で、私は新たな視点を学び、「良い写真」を超えた「真にインパクトのある写真」を生み出すためのディテールや表現手法、ニュアンスへの意識を身につけてきました。

私が写真の分野で仕事をしているのは、ただ単に写真を撮るのが好きだからではありません。写真家という職業が、記憶を生み出し、未来へと留めておくことを可能にしてくれるからです。
写真は唯一無二の時間や感情を捉えるメディアです。二度と同じようには再現できない、はかない瞬間を1枚に留めます。
私にとって写真とは、ある意味で時間を停止することであり、それは撮影者である私だけでなく、被写体となる人々にも、その時間を追体験できるようなしるしを残すことなのです。
写真は感覚を表現し、ストーリーを伝え、視覚的な宇宙を創造する手段です。そして、そのすべてが私自身の表現になります。プロジェクトを重ねるごとに、自分の目がさらに磨かれ、自分のスタイルの精度が研ぎ澄まされていくのを感じています。

Sigma 35mm F1.4 DG II | Artを使った撮影では、私自身がインスピレーションを受けられる環境の中で、多彩な雰囲気のイメージを生み出してみたいと考えました。そこで選んだのが、2つの対照的なアプローチです。
ひとつは、冬の森を舞台にした屋外撮影、そしてもうひとつは、ダンサーを被写体とし、より親密で繊細な雰囲気を重視したスタジオ撮影です。
全く異なる文脈をもつこれら2つの環境で撮影することで、このレンズの特性を最大限に引き出しながら、自分自身の芸術的なビジョンをさまざまなかたちで試し、深めてみようと考えました。

冬は、アウトドアでの撮影に多くのインスピレーションを与えてくれる季節です。私は霧に包まれた冬の風景がもつ、穏やかさと神秘性を兼ね備えた雰囲気を捉えたいと考えました。
森は広がりと奥行きを感じさせる空間であり、自然の中に身を置いた時の孤独や静寂を表現できます。
私の狙いは、被写体と周囲の環境とが相互作用を起こすようなポートレートを撮影することでした。
風景写真としての性格も残しつつ、モデルのポーズや佇まいを工夫することでイメージにさらなる力強さを持たせます。
霧、木々、そして冬らしい色調が重なり合うことで、写真には自然な深みと詩情が生まれました。

スタジオ撮影では、自分にとって馴染み深く、個人的にも強い情熱を抱いているダンスの世界をテーマとしました。バックライトとスモークを用いて深みと質感を加え、繊細でエレガントなイメージを生み出すことを目指しました。
ダンスは人間の身体の動きと繊細さを捉えるのに最適なモチーフです。私は、ひとつひとつの所作に宿るしなやかさと気品、そして流れるような美しさを丁寧に表現したいと考え、様々な照明を試しながら、ミニマルでありながらも豊かな表現力を備えた撮影にチャレンジしました。

Sigma 35mm F1.4 DG II | Art は、屋外とスタジオという異なる撮影環境のどちらにも完璧にフィットするレンズでした。35mmという焦点距離は、被写体との距離を近く保ちながらも、周囲の環境をフレームに収めることができ、これはアウトドアでもスタジオでも重要な要素です。
F1.4の絞り値は自然な被写界深度を生み出し、過度な印象を与えることなく被写体を際立たせられます。
なかでも私が特に感銘を受けたのは色の再現性の高さです。
屋外の撮影では、森や霧の寒色系の色調を正確かつ美しく再現し、スタジオでは、肌の色調や光のコントラストを私が思い描いた通りに表現できました。そのおかげで、私は自信を持って撮影に臨み、表現したい雰囲気を生み出すことに集中できたのです。

単焦点レンズでの撮影は、構図や動きをより深く意識するきっかけとなります。様々なアングルを試し、光や空間で実験を繰り返すプロセスそのものが、創造性を鍛えてくれます。
そして、このレンズはどちらの撮影プロジェクトでも終始自然に寄り添い、私のビジョンやスタイルを忠実に反映した作品づくりを支えてくれました。
私のワークフローにも完璧にフィットし、感性を磨きながら、写真表現を探求し、より洗練させていくための自由を与えてくれました。

Sigma 35mm F1.4 DG II | Artで撮影した1枚1枚が、私が写真家を志した原点へと立ち返らせてくれました──それはすなわち、意味のあるイメージを創造し、感情を伝え、物語を紡ぐこと。
それこそが、私にとっての写真なのです。

Sigma 35mm F1.4 DG II | Artは優れた描写性能を備えているだけでなく、表現の自由度を大きく広げてくれるという点でも、私の写真撮影に欠かせないレンズとなりました。
自分のビジョンに確かな自信を与えてくれると同時に、新たな視点を開き、スタイルを進化させ、そしてより豊かな視覚表現の探究を後押ししてくれる1本です。

BEHIND THE SCENES

ABOUT

エリオット・オービン|Elliot Aubin
写真家/ビデオグラファー

独学で写真を学び、現在は様々なブランドやモデルと仕事をする、フランスの写真家。ポートレートとダンス撮影を得意とする。被写体を"真に生かす"ため、背景や光に特別な注意を払う、独自のスタイルを持つ。
愛着のある故郷ブルターニュのナントとパリの街を行き来し、2つの都市が持つものすべて、そしてそれぞれの特徴を活動の軸としている。

SPECIAL THANKS

ロリアーヌ・カトゥロワ=ローズ