夜明けを駆けるトレイルランナー:大口径レンズが描く光の美
CONTEMPORARY
12mm F1.4 DC
Impression
by セバスチャン・ミッターマイヤー|Sebastian Mittermeier

静かな夜でした。寝袋から抜け出して夜空を見上げると、星たちがくっきりと輝いています。時刻は午前4時。私は改造キャンピングカーの後部座席で一晩を過ごしました。
目を覚まして間もなく、マックスとフィリップも登山口の駐車場に到着しました。
なぜこんな早朝にこんな場所に集まっているのかというと、それはAPS-C用レンズの新製品である Sigma 12mm F1.4 DC | Contemporaryを使ってトレイルランニングを撮影するためです。
このレンズはF1.4と非常に明るいので、その性能を活かすためにも夜明け前に撮影をスタートさせたいと考えていました。マックスは映像撮影を、フィリップは今回の被写体であるランナーを務めます。


目的地に間に合うよう、最初の標高差400メートルは電動自転車に乗って20分で駆け上がりました。
その後は徒歩で登っていきます。そのため、バックパックに収めた撮影機材が軽量だったことは本当にありがたかったです。
Sigma 12mm F1.4 DC | Contemporaryはほとんど重さを感じさせないほど軽量で、しかもコンパクトなので収納スペースも取りません。


撮影をはじめてまず気づいたのは、画面の周辺までディストーションがほとんど目立たないということでした。画質も非常にクリーンで、ディテールをくっきりと捉えたポートレートにも最適でした。
F1.4という明るさによって、ISO感度をできるだけ低く抑えることができます。
また、このレンズは開放から高いシャープネスを発揮し、早朝にも関わらず素晴らしい写真を撮影することができました。

暗い環境では、AFでピントを合わせるのが難しいこともあります。特に広大な風景の中で小さな被写体を捉えるときは尚更です。しかし、Sigma 12mm F1.4 DC | Contemporaryは素晴らしい性能を発揮し、AFが迷うことは一切ありませんでした。
昇る朝日を背にフィリップがカメラに向かって走ってくるような逆光のシーンでも、全く問題なく撮影できました。

撮影に出かける前は、12mmという焦点距離が撮影プランに対して広角すぎるかもしれないと少し心配していました。被写体が小さくなりすぎて、背景となる風景の中に埋もれててしまうのではないかと考えていたからです。
しかし、それは杞憂でした。35mm換算で18mmという焦点距離は、フルサイズ用の16mmのレンズを使うときと同じような感覚で撮影でき、しかも思っていた以上にはるかに汎用性が高いレンズだったからです。
ほとんどディストーションが目立たないことも相まって、超広角ならではのクラシックな構図で撮影できるだけでなく、被写体のディテールまではっきりと捉えることができました。



「これ一本でなんでもこなせる万能レンズか」と言われると、そうではありません。そういった用途なら、他のレンズの方が適しているでしょう。
けれども、「想像以上に多彩な表現ができる素晴らしいレンズか」と問われれば、100%イエスと答えられます。
暗い環境での優れたパフォーマンスを重視しつつ、単焦点レンズとして必要な要素をすべて兼ね備えたAPS-C用のレンズを求めている人にとって、このレンズは最適なチョイスだと言えるでしょう。

