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共生の瞬間美

CONTEMPORARY
20–200mm F3.5–6.3 DG
Impression

by 井上秀兵|Syuhei Inoue

Sigma 20–200mm F3.5–6.3 DG | Contemporaryを初めて手にしたとき、まず驚いたのはその軽さだった。

高倍率ズームレンズは“アマチュア向け”という先入観を持っていたが、このレンズを2泊3日の撮影に使ってみて、その印象は大きく覆された。

撮影地は長野県の「ist -Aokinodaira Field」。

「自然とともにある」という理念に共感し、この場所で幾度もシャッターを切ってきた。

今回は、新しいレンズで自然とともにいる人の“在りよう”を写したいと思った。
風や光、静かな時間の中にいる人々を、説明ではなく、感覚で伝えたかった。

このレンズに感じた可能性は、20mmから200mmという広い焦点距離を、自然に、感覚的に使い分けられる点だ。大胆なクローズアップ、ワイド端のダイナミックな表現、遠くの被写体への瞬時の対応力──どれもが、直感的に操作できる。

ある日は、雨上がりの草露をマクロの視点で収め、別の日には空に突然現れた大きな虹を20mmでぎりぎり収めた。一瞬しか現れなかった大きな虹は、レンズ交換が必要だったら間に合わなかった可能性もある。

普段は、単焦点を好む。その理由は、構図や光をきちんと見極めたいからだ。ズームは「どっちもいいな」と迷いが生まれ、感覚が鈍ると感じていた。

でも、このレンズは違った。

撮りたいという衝動に、自然に応えてくれる。

川面に反射する光、遠くに佇む鳥。見逃すと二度と訪れない瞬間に気づき、切り取れたのは、この一本だったから。ズームであることが「迷い」ではなく「選択」になる。

それに気づいたとき、このレンズは便利な道具ではなく、瞬間美を確実に捉える強さになった。

写真とは、自身の視点を、見る人の感覚に訴えるものだと思っている。istという場所も、ここで過ごす人の表情や静かな時間を写せば、きっと何かが伝わる。その「何か」を、自然な距離感で、迷いなく写し取れる。

この一本は、写真の可能性を大きく広げてくれそうだ。

Behind the Scenes

ABOUT

井上秀兵|Syuhei Inoue

フォトグラファー(Studio neutral)

自然と人、記憶と美学を繋ぐ写真を通じて、写真活動を行っている一人。 主な撮影媒体は企業広告やアウトドア分野が中心。 撮影被写体の本質や美しさをシンプルかつ印象的に捉えることを重要視し、表情や光のグラデーション、質感を追求しています。

Behind the Scenes 撮影&編集:
中村勇輝(STUDIO UNDULATION)
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ライター:飯室佐世子(株式会社声音)
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撮影協力:ist - Aokindoaira Field
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