

SIGMA fp Style 11
伊丹 豪
写真家
SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, 70mm F2.8 DG MACRO | Art, 85mm F1.4 DG HSM | Art
music: Metome “Plural”
5年ほど前から熱心なFoveonユーザーである自分には当初、SIGMA fpは少し怖かった。カメラとしての機能には目を瞑らざるを得ず、感度は固定で使用せざるを得ず、ソフトに至っては怒りを通り越してPCをそのために買い換えるほど、撮れた写真に、Foveonに執着してきたからだ。
とはいえ仕事ではそういうわけにもいかず、要領、効率、スピードが求められるので、そういう場合にはベイヤーセンサーを使用してきた。
はっきりとFoveonとベイヤーの画質には差がある。それはいい悪いではなく、根本的に写り方が違うということなのだが、Foveonに慣れた目にはベイヤーセンサーの定着するイメージは眠く見えていた。それが昨年、新しいベイヤーセンサーのカメラを使用したところ、古臭い自分の意識をあっさり裏切られた。依然として2 つのセンサーに違いはある。ただ、現行のベイヤーセンサーの解像度を含めた優秀さというのは、ちょっと予想の範囲外だった。
そんな事もあって、半信半疑でベイヤーセンサーを利用し始めていた頃に発表され、手元に届いたのがfpだった。

SIGMA fp, 85mm F1.4 DG HSM | Art, F8, 1/1600s
おそらくムービーとスチールがシームレスに繋がること、機材のコンパクトさなどが大きなトピックだと思うし、自分もそう思う。ISO 6400が普通に見えるSIGMAのカメラを使用できる日が来るなんて思ってもいなかったし、人の目をめがけAFが追従するのを見た日には何故だか妙に熱くなった。
だがしかし、一番驚いたのはやはりベイヤーセンサーの優秀さだった。画素数はそれほどでもないが、定着しているイメージを見ると、みっちりと、階調は豊かに、そして素晴らしく解像して定着している。低いISOでのノイズの少なさには未だに感動してしまう。ノイズがないということが、定着されたイメージの解像感や、透明感(ヌケの良さ)に寄与する、というのは予想はできたが、これほど大きいとは思っていなかった。Foveonをずっと使用してきたからこそ、より強くそのことを思う。

SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, F5, 1/1000s
自分のように機材の特性こそが自分の写真の特性であり、最終的なアウトプットの性質を決定づけると思っているような人間には、このようなテクノロジーの進化による機材のアップデートは非常に重要であり、そして一番の醍醐味でもある。
この先に登場するはずのフルサイズFoveonが、どういうセンサーであるのか、それによって自分の写真がどう変わるのかというのが、このfpによって焚き付けられてしまった。
写真の持つ極めて高度な複製性、というメディアの特性に忠実にあるカメラを常に求めているし、それに応えられるような写真を撮る人間でいたい。