第273回
箱根の千条の滝(ちすじのたき)から飛竜の滝(ひりゅうのたき)までハイキング / Hiking from Chisuji Falls to Hiryu Falls in Hakone
May 07, 2021
木漏れ日が揺れるヒノキの山中、見るからに健脚者だと分かるハイカーが丸太の階段を登って来る。
私は構図を決め、ハイカーが画面内に現れるのを待って撮影した。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Artを実際に手にしてみると予想よりコンパクトで、小型・軽量なSIGMA 85mm F1.4 DG DN | Artと組み合わせ、山を歩きたくなった。2年前の春に歩いた箱根旧街道の石畳は、カメラリュックを背負って丁度よい運動量だったことを思い出し、SIGMA IシリーズのSIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryも加え、その時歩いた石畳の北に位置する「千条の滝」と「飛竜の滝」間を歩くことにした。4月の第4土曜日、JR東日本逗子から東京行きの始発に乗車、大船でJR東海道本線・熱海行き乗り換え、小田原(標高14m)で箱根登山鉄道・箱根湯本行きに乗り換えた。箱根湯本(標高96m)からは、ジグザクに登って行く箱根登山鉄道・強羅(標高541m)行きに乗り、初めて乗る登山電車を満喫し、7時5分に小涌谷(標高523m)で下車した。箱根湯本からの登山電車には数人のハイカーが乗っていたが、小涌谷で下車したのは私一人だった。千条の滝に着くと滝の端に朝陽がさしていた。滝では、水が流れ落ちる音と鳥のさえずりに心が和み、気がつくと一時間半も滞在していた。
小涌谷の駅から山中へ入ると、赤い実(アオキだと思われる)が木漏れ日を受け色鮮やかだった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
千の糸になり水が流れ落ちていることから、千条の滝と呼ばれる滝の端に朝陽がさしていた。
北西に向く幅約20m、高さ約3mの滝全体が光に満たされることはなさそうだ。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
苔むした岩肌に角のとれた石ころが見える。
この様な丸みのある石が集まった岩の塊を円礫岩(えんれきがん)といい、円礫岩は土石流によって堆積した。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
滝のある小涌谷は、江戸時代には「小地獄」と呼ばれ、明治10年代に温泉場として開けるまでは荒地だった。
大正時代に滝までの道が整備されまで、千条の滝はほとんど知られていなかった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
千条の滝は、箱根火山・中央火口丘の伏流水が流れ落ちている。
水量は多くない滝だが、都会の雑音がない森で滝の音に包まれる。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
千条の滝がかかる蛇骨川(じゃこつがわ)。滝と川の音が混ざり、そこに鳥のさえずりが加わる爽やかな朝だった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
苔に覆われた石畳が蛇骨川の西岸に伸びている。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
千条の滝では、一組の年配の夫婦が通り過ぎた他には誰にも会わず、私はその夫婦を追うように蛇骨川を渡り、鬱蒼とした山道を登った。宮ノ下分岐まで登るとそこからは平坦な明るい尾根道になった。標高804mの浅間山の頂上に到達するとそこは明るく開けた土地だった。鎌倉時代には箱根越えのルートだった湯坂路(ゆさかみち)は、鎌倉古道とも呼ばれる人気のハイキングコースになり、その中継地点である浅間山の頂上はランチブレイクを取るハイカーで賑わっていた。私は、浅間山から椿が咲く明るい尾根を南下し、急斜面を登り標高834mの鷹の巣山に到達した。鷹の巣城跡であるここにも休憩するには良い場所で、設置されたテーブルでランチを楽しむ親子と挨拶を交わし、カメラリュックを下ろし水分補給をした。
千条の滝からヒノキの根が張り出した山道を登る。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
大きく張り出したヒノキ根の前に出た。下を向いて山道を登って来た私は、森を見上げてみた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
薄暗い森の中、スポットライトになった木漏れ日が張り出した根を照らす。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
浅間山から椿の花が咲く明るい尾根を歩く。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
赤だけでなく白い椿の花も咲いていた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
新緑の中、4人組が腰を下ろし休んでいた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
このサインは「急坂」の意味だろうか、鷹の巣山へ至る山道はかなりの急斜面だ。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
鷹ノ巣山からは、明るい尾根道の湯坂路(鎌倉古道)を南西へ歩き、地図看板が立つ「飛竜の滝自然探勝歩道」との分岐点まで来ると、立ちながらランチを頬張る初老の男性が話しかけてきて、箱根には珍しい花が沢山あり、看板の傍に咲く小さな花の名前はタチツボスミレだと教えてくれた。そして、飛竜の滝まで下りて戻って来ると言い残し、滝へ歩いて行った。私はタチツボスミレを撮影しスナックを取った後、飛竜の滝へ向かった。その途中、丸太の階段を登って来たハイカーを入れてタイトル写真を撮ったが、そのハイカーは分岐点で話した男性だった。男性は、「滝は水量もあり周辺に花も咲いていたよ、箱根で一番じゃないかな、鎖を越えて近づいては駄目だよ」と言い残して階段を登って行った。
鷹ノ巣山から南下すると湯坂路(鎌倉古道)は明るく歩きやすい尾根道になる。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
花好きな男性に出会わなければ撮影することはなかった2cmにも満たないタチツボスミレ。
チルトができる電子ビューファインダーを上から覗き、地面に近い位置からでも楽に撮影が出来た。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
森林浴をしながら下りて来た丸太の階段を振り返る。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
飛竜の滝にたどり着くと3人の山ガールが滝の下にかかる橋で自撮りをしていた。私は、彼女たちが去るのを待ってからカメラを三脚に据えた。滝は予想より豪快な音をたてて流れ落ちていた。小さな橋で滝の下を横切り、滝の横を少し登ると迫力のある滝に近づけた。説明看板によると滝は上段15mと下段25mとあり、近くに見えた滝の上に水が流れ落ちるのが確認出来たので、そこが上段の滝とするなら、よく見えたのは下段の滝になる。上段と下段の位置についての説明はなく、上段と思われる部分を見るためには立ち入り禁止の滝の脇を登るしかない。龍が飛揚するかのような形をしていることから、その名がついたといわれる飛竜の滝は、私には、音は迫ってくるが全体像がよく見えない滝だった。
浅間山の溶岩がつくる飛竜の滝を見上げる。爆音と溶岩が印象に残る滝だった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
新緑の間に少ししか滝が見えないが、それもまたこの滝の特徴だ。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
豪快な滝の音を聞きながらよく見えない滝に近づく。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
飛竜の滝は、鎌倉時代に行者が鎌倉街道を進む道中、滝に打たれ身を清めた修行の場だった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
飛竜の滝からは、戦国時代には箱根越えの中間地点として多くの旅人が行き来し、箱根寄木細工の発祥の地でもある畑宿まで下り、箱根根湯元行きのバスに乗った。2年前、箱根旧街道の石畳を歩いたスタート地点が、この日の歩きのゴール地点となった。小涌谷駅から畑宿まで約6kmの山歩きは傾斜のきつい区間もあったが、天気にも恵まれ、機材を軽めにしたので快適だった。
飛龍の滝から下りの山道には大小様々な苔のむす岩が転がっている。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
飛竜の滝と畑宿へ下る途中、火山から流れ出た溶岩がゆっくり冷え固まり、柱のような割れ目がある柱状節理(ちゅうじょうせつり)の岩壁を見上げる。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
山道脇に咲くシャガを撮影した。新レンズの35mmはかなり寄れるので花の撮影にも重宝する。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art
千条の滝と飛竜の滝周辺を、SIGMA fp Lと3本のレンズ(SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary、SIGMA 35mm F1.4 DG DN | Art、SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art)で動画撮影した。
この日、大きさも形も違う二つの滝の間を歩き、新レンズのSIGMA 35mm F1.4 DG DN | Artを中心に撮影した。このレンズが出ると聞いた時は、また35mm?と思ったが、実際に使ってみると有り難いレンズだった。同じArtラインのSIGMA 35mm F1.2 DG DN | Artは、抜きん出てすばらしいが、重さとサイズを考えるとカメラリュックに入れるにはある程度の覚悟が必要だ。一方F 1.4は、SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Artとほぼ同じ重さとサイズ感で開放F値も同じだから、この2本は釣り合いが非常に良い。コンパクトだが超高画素のSIGMA fp Lに相応しいレンズがまた一本増え、嬉しい一日となった。