第270回
バララット・ゴーストタウン
/ Ballarat Ghost Town
March 30, 2021
野生のロバが駆け巡り、砂煙が上がっていたところに犬が現れ、ロバに向かって吠えた。
カリフォルニア州で9番目に大きな街・ベーカーズフィールドから北東へ約240kmのモハベ砂漠に位置するバララットは現在ゴーストタウンだが、ゴールドラッシュ時代には探鉱者でかなり賑わっていた。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
明け方の冷え込みが厳しかった冬の日、バララット・ゴーストタウンへ向け、砂漠地帯の一本道を独り走る。広大な風景をカメラに収めるため、すれ違う車もほとんどない道の路肩に車を寄せ、車から冷たい風が吹く外へ出る。砂漠地帯の夏は暑く、日中は太陽が天敵にさえ感じるが、冬は暖かい陽射しが何より有り難い。
走行する車がほとんどないパナミント・バレー(Panamint Valley)の一本道に立つ道標。
澄み切った朝の空気の中、私も道標と同じようにこの大地に溶け込んでいく気がした。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
目的地のバララットへ行くバララット・ロードの入口付近には、19km先の山奥にある銀鉱山跡のパナミント・シティーを指すマーカーが設置されている。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
サイティング・チューブ(Sighting Tube)越しに銀鉱山跡がある山脈方向を撮影。
この鉱山跡まではきつい山歩きが必要のようだが、冒険心を掻き立てられる。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
ゴーストタウンが標高3,000m以上の山が連なるパナミント山脈の麓に小さく見える。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
バララットへ向かうダート道に車を停め乾いた砂漠地帯を歩くと、何もない砂地に落ちていた缶が目を引いた。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
標高329mのバララット・ゴーストタウンは、南北160kmに伸びるパナミント山脈(最高峰・テレスコープ峰の標高は3,369m)西の麓にある。山脈はデスバレーの西の境界になりその大部分はデスバレー国立公園に含まれ、山脈西にはパナミント・バレーと呼ばれる砂漠地帯が広がっている。パナミント・バレーからバララットへ向かいダート道を走ると、雄大なパナミント山脈が正面から迫って来て自分がちっぽけな存在に思えてくる。
砂煙を上げてダートロードを走りバララットに到着すると、ロバの後ろ姿が出迎えた。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
訪問者の女性が手で触れてもロバは逃げない。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
人に慣れたロバは私にも近寄ってきたが、餌をくれないと分かると遠ざかって行った。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
バララットは1897年に郵便局が開設され、町となった。全盛期(1897年から1905年)には400人から500人まで住人が増え、鉱夫と探鉱者で栄えたが、町の東にあった鉱山が操業を停止してから町は急激に衰退し、1917年に郵便局は閉鎖された。
まだ原型がイメージ出来る朽ちた建物。
雀のような小鳥が屋根の周りを飛び交っていたのが印象的だった。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
アドベの壁に空いた穴は窓か建物への出入り口だったのだろうか。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
十字架にも見える朽ちた建物の残骸。鉱夫と探鉱者の町には7軒のサロンと3軒のホテルがあったが、教会はなかったようだ。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
建物の中心部だけが残った廃墟。大きな建物だったと想像出来る。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
町が設立された年に生まれた人の墓があったが、町が衰退した後もこの地に数人が住み続けたようだ。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
刑務所・遺体安置所だった建物。
鉱夫と探鉱者の町は争い事が絶えなかったようだ。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN | Art
北に面した刑務所・遺体安置所だった建物の窓からは、今も昔も変わらない雄大な景色が見える。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
刑務所・遺体安置所のブリキ屋根が輝いていたが、状態がいいので修繕されているのだろう。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
探鉱作業に使用されたトロッコ。ゴーストタウンを訪れる人のためにここに置かれたのだと思う。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
錆びて朽ちたトラックのハンドル。
カラーモードはシネマを選び、開放F値近くで撮影し背景を大胆にぼかした。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
錆びた缶や器具が集められて置かれていた。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
まだ動きそうなピックアップトラックを助手席の窓から覗いて撮影。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 35mm F1.2 DG DN | Art
錆びた重厚な器具が放置されている。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
ピックアップトラックの錆びた色は、乾いたこの土地によく調和していた。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
膝ぐらいの高さの草木が午後の光に染まる。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
ゴーストタウンを動画でも撮影した。
平坦な土地にあるバララット・ゴーストタウンに1軒の土産屋があり、私はその店で帽子を買った。この時店を営んでいた女性は気候が良い時季だけサンディエゴから手伝いに来て、広大な風景を楽しんでいる。店のオーナーは同じ敷地内に独り住んでいるとのことなので、現在のバララットの住人は1人ということになる。このゴーストタウンには訪問客も多いし野生のロバもいるので、荒涼とした土地に独り住んでいても寂しくないのかもしれない。