第38回:オレゴン州、サウス・コーストの夏
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。 91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

オレゴン州の海岸線は美しい景色がどこまでも続いている。
この朝の海岸は快晴で海は穏やかだったが、陽が昇るまで厚手のジャケットと手袋が必要だった。

使用機材:SIGMA SD1 + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm

アメリカ南西部に暑さ警報が出ていた7月初旬、私はオレゴン・コーストを目指し、ロサンゼルスからハイウェイ101を北上した。ブドウ畑が広がるサンタ・ロサ(Santa Rosa)まで来ると、サンフランシスコで一度下がった気温は急激に上がり始めたが、私は冷房を全く入れず一気に北カリフォルニアの海岸線まで走った。オレゴン州に入ると最初に見えた州立公園(Crissey Field State Park)に車を停め、砂浜に出る。

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カリフォルニアとの州境の砂浜は、平らでどこまでも続くように見える。
砂浜には、流木を利用した小屋がいくつかつくられていた。押し寄せる波の音を聞きながら、ここで眠りたくなった。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20 mm (17-50)

オレゴン州に入り砂浜を少し歩いた後、オレゴン・コースト・ハイウェイ(ハイウェイ101)を少し北に走りブルッキング港(Brookings Harbor)に立ち寄る。港の砂浜沿いには、何台ものキャンピングカーが停まり、夕陽を見ながら夕食を楽しむ人の姿を見かけた。小さな湾になっている部分は、漁船が停泊し、米国沿岸警備隊の基地が建っている。港には、海から生活の糧を得る人、海を守る人、海に遊びに来ている人がいて、静かな活気があった。

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午後8時を過ぎても強い太陽の光が、USコースト・ガードの船の存在感を強め、 標準ズームレンズを船に向けると、カモメが船の上を飛んで行った。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm (17-50)

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様々な漁船が停泊する港。この日の夕方はとても静かで平和だった。 ほぼ逆光だったが、デジタルカメラは暗部もしっかりと描写し、この時間帯の港の空気も捉えていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm

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日没が近くなった暖かい陽の光が港を染める。 長めのマクロレンズは、使い込んだ漁師の道具をシャープに切りとる。

使用機材:SIGMA SD1 + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150 mm

港から北へ少し走ると、水平線に太陽が沈む寸前だった。海岸に行くと、サンセットを見ようと人が集まっていた。海岸の岩と砂浜にいる人がシルエットになり、海面と西の空が赤く染まる光景にただ見惚れる。

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午後9時近かったオレゴン・コーストのサンセットは、風が弱く海は穏やかだった。 西の水平線に沈もうとする太陽にレンズを向け、高画質のデジタルカメラで日の終わりを描写する。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm

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陽が沈み、南東の空には月が出た。岩の上にはカモメが動かず、どこへも飛んで行きそうもなかった。 急ぐ必要のない光景、カメラを三脚に固定し撮影。

使用機材:SIGMA SD1 + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:200 mm

サンセットを迎えた周辺にも宿はあったが、ハイウェイを北へゴールド・ビーチ(Gold Beach)まで走り、そこで宿を見つけた。その夜、ゴールド・ビーチまでの海岸線は暗くなりよく見えなかったが、すばらしい景色を見逃していると感じながら眠りについた。翌朝、日の出前に宿を出て南に少し戻るように走ると、そこには前夜思った通り美しい海岸の景色が広がっていた。

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冷え込んでいた海岸は、陽が昇ると暖かくなった。 海岸には、巨大で様々なかたちをした岩が点在する。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm

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朝日が届き始め、それまで誰もいなかった砂浜に人影を見かけるようになった。
太平洋を背にし、東に向かって撮影。彩度を落としコントラストを上げ、朝日に輝く砂浜を強調。

使用機材:SIGMA DP2s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24.2 mm

前夜、宿泊した人口2000人足らずのゴールド・ビーチに戻り、港を散策した。朝日を浴びた朽ちた船が、河口に一際目を惹く。港は太平洋に注いでいる大きな川(Rogue River)の河口につくられ、海には面していない。私は、川幅が大きく地図で確認するまでこの地形は分からなかった。19世紀の中ごろエレンズバーグ(Ellensburg)と呼ばれていたこの集落は、沢山の砂鉱鉱山が河口に存在し、後にゴールド・ビーチと名前を変えた。

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河口で見かけた朽ちた船。塗装はほとんど剥げ落ち、鉄の部分は錆付き、船腹は苔で覆われている。 しかし、船としての存在感は現役の舟より強烈に感じ、マクロレンズで正面から船に迫り撮影。

使用機材:SIGMA SD1 + MACRO 70mm F2.8 EX DG | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:70 mm

大きな川に架かった橋(Isaac Lee Patterson Bridge)を渡り、ゴールドビーチを後にした私は、オレゴン・コースト・ハイウェイを北上した。しばらく走ると海へ突き出すように伸びている小さな半島と、その半島の先には二つ岩山が見えた。ハイウェイ沿いの駐車場から海岸までのトレールが伸びていた。私は、草むらの中を歩いて誰もいない海岸にたどり着いた。

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海岸に続く細いトレール沿いには白い花が咲き、潮と草の匂いがした。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:23 mm

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Sisters Rock State Parkの海岸。 ひとつの岩山を超えるともうひとつ岩山があり、海にも岩山が浮いているように存在する。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

Sisters Rock State Parkから海岸線をさらに北上し、オーフォード港(Port Orford)に寄る。 オーフォードは、この少し北のケープ・ブロンコ(Cape Blanco)より気温はかなり高めのため、 地元の人はこの町をバナナ・ベルト(温暖な避寒地を呼ぶ俗語)と呼んでいる。

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港は快晴。魚をさばく白いテーブルと白いホースがまぶしく光っていた。 デジタルカメラは、肉眼ではよく認識できなかった白く塗装されたテーブルと白いホースの質感を忠実に描写する。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:40 mm (17-50)

暖かいオーフォード港からハイウェイは、海岸から少しずつ離れていった。私はハイウェイからケープ・ブロンコに向かい西に走った。海岸に近づくと霧が出始め、岬まで来ると深い霧に包まれた。風は台風のように強く吹き寄せ、車が岬から海岸に吹き飛ばされるのではと心配になる。車から外に出た瞬間私の帽子は遠くに飛ばされ、そこは7マイル(11km)ほど南のオーフォードとは別世界だった。海岸から離れて走るハイウェイに戻ると再び快晴になり、さらに北上し海岸線に近づきバンドン(Bandon)に来ると再び霧に包まれた。

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ケープ・ブロンコでは強風で立っているのがやっと、腰を落とし撮影した。 この少し南の海岸は快晴だった。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:9 mm

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霧に包まれたバンドンの海岸線。太陽は遠く感じた。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm

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コーキール川(Coquille River)の北側の浜辺には、 深い霧も気にせず多く人が遊びに来ていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm

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高さ約40ft(12m)の灯台(Coquille River Lighthouse)は、1896年に初灯火され、 1939年にコーキール川の南岸に新しい灯台が建てられ灯は落とされた。 もう光らない灯台が建つ海岸は霧に包まれ、幻想的な光景だった。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:85 mm

バンドンからハイウェイは海岸から離れて陽の光を浴びたが、クース・ベイ(Coos Bay)まで北上すると霧に包まれた。オレゴン・ベイ・エリアと呼ばれるこの辺りは湾自体が大きく、霧に包まれた湾沿いは海岸線を走っているように感じる。

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クース・ベイに来ると、オイスターの貝ガラの山を沢山見かける。 車を路肩に停め、コンパクトなデジタルカメラでスナップ。

使用機材:SIGMA DP2s | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24.2 mm

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ノース・べンド(North Bend)には、沢山の木材が積まれていた。雲が切れて陽の光が木材を積み込む船を照らし出す。光は直接木材に届いてはいなかったが、高画質のデジタルカメラは、光が当たらない1本1本の木材の重みをしっかりと捉える。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:17 mm (17-50)

クース・ベイ・ブリッジ(現在の正式名Conde McCullough Memorial Bridge)を渡り、大きなクース・ベイから北に走っても霧は晴れなかった。

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ウィンチェスター・ベイにはいくつかの州立公園があり、深い霧に包まれた夕方にもかかわらず、多くの人が釣りや散歩を楽しんでいた。

使用機材:SIGMA SD1 + APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:200 mm (70-200)

リーズ・ポート(Reedsport)まで北上すると霧は消えていた。西にある太陽はまだ高く、アンプクア川(Umpqua River)を渡る前にサングラスをかける。

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ここに来るまで沢山の橋を渡ったが、橋の中央が回転し舟を通す旋回橋(Swing Bridge)であるこの橋(Umpqua River bridge)がもっとも印象的だった。北のボロン・アイランド(Bolon Island)側に渡り、車が来ないこと確認しすばやく撮影。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:13 mm

この日は快晴の日の出から始まり、深い霧と冷たい強風に出会い、夕方になると快晴の空になった。 天候はドラマチックに変化し、すばらしい風景はどこまでも続いているように思えた。そして、私はさらに北へ走った。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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