シグブラ
第5回:せせらぎの街・三島ブラブラ

せせらぎの街・三島ブラブラ

March 29, 2013

水辺が好きだ。川や湖、海など水のそばはとても落ち着く。そういう場所は景観に変化があるし、生き物が数多く棲んでいるのがいい。自然の水辺はもちろん素晴らしいが、生活に溶け込んでいる街中の水辺も捨てがたい。せせらぎが街に潤いを与えている場合が多いからだ。そんなわけでずっと気になっていた「せせらぎの街」三島をブラブラしてきた。ここでは街中至る所で富士山からの湧水を目にすることができるのだ。

三島の駅から富士山と反対方向に歩くと楽寿園という庭園がある。ここは湧水が名物の一つなのだが、近年水量が減少しており、この日も中心となる小浜池の水はほとんど干上がっていた。それでも多くの人々で賑わい、明るい雰囲気で満ち溢れていた。

楽寿園を出て源兵衛川を歩く。川と言っても天然のそれではなく、いわゆる用水路だ。川には散策用の飛び石が設置されていて、せせらぎを楽しみながら歩くことができるようになっている。飛び石はしっかりとした大きなものから、小さく角が丸くなったちょっとスリリングなものや、木道があったりして楽しい。せせらぎで遊ぶ子どもたちも多く、見ていて微笑ましい。

両岸の家々には昔水汲みや洗濯をした「川端」があって、せせらぎが暮らしと密接に関わっていたことを教えてくれる。川端は家事だけでなく井戸端会議や子どもたちの遊びにも役立っていたようだ。源兵衛川は一時期かなり汚れていたそうだが、地元の人々の努力によって現在のせせらぎになったという。水音を聞きながら歩いていると心が穏やかになっていくような気がする。

お寺の脇を通り、東海道を越えると老舗の鰻屋が現れた。大勢の人たちがせせらぎ沿いに座って順番待ちをしている。かなりの人気店のようだ。ちょうどお腹も空いているが、この行列では食べるまでかなり時間がかかりそうなので断念し、せせらぎを歩き続けることにした。岸辺の花々や水鳥を見ながら進む。

ちょっと歩くと伊豆箱根鉄道の線路をくぐって通る箇所がある。ここは高さが1メートルちょっとしかないので屈んで通り過ぎる必要があるのだ。機材の入ったバックパックを胸に抱えてそろりと通過。「南武線・二ヶ領用水にも同じような場所があったな」と思い出す。その先にはせせらぎを眺めながら食事ができるテラスレストランが。ワインでも飲みながら水面を眺めたいが、ここも人気で満席のようだ。残念。

さらに歩を進め「三島梅花藻の里」で可憐な花を楽しむ。そよぐ藻を見ていると、昔訪れた鳥海山麓の牛渡川を思い出した。この近隣の柿田川も同じように短い流れながら美しく、豊富な水量で名高い。近いうちにまたその清流を撮影に行きたい。

せせらぎをしばし離れ三嶋大社に向かう。この辺りは散策道のタイルがカラーリングされており、これを辿っていけば道に迷うことなく推奨コースを歩くことができる。土地勘のない旅行者にもフレンドリーだ。街並みをキョロキョロしながら歩いていると、みしまコロッケなるご当地B級グルメを発見!しかしどの店も長蛇の列でまたしてもありつけそうもない。「今日はこのまま昼ご飯抜きか」と思っていたところ、なんとか入れる鰻屋を発見!ちょっと予算オーバーだったが鰻重を食すことができた。甘辛のたれで美味だった。

三嶋大社は桜がほぼ満開。境内では結婚式も行われており、花見客と参列する人などで相当混雑していた。「おめでとう!」と声をかけ、新たな門出を迎えたカップルを撮影させてもらう。時折舞い散る桜の花びらが二人を祝福しているかのようであった。 しばらく境内を散策した後、桜川に沿って三島駅に向かう。道ばたには文学碑が駅まで並んでいるので眺めながら歩くと面白いだろう。白滝公園を過ぎ、歓楽街を過ぎるとそこが駅だ。切符を買いJRのホームに向かう途中に、伊豆箱根鉄道の車両が見えた。次回はローカル線に乗ってブラブラするのも悪くないな、と思いつつ東海道線に乗り込んだのであった。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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