第276回
小網代の森 / Koajiro Forest
June 16, 2021
森の木道は谷へ続き、その先には平坦な湿地が広がり、湿地を抜けると干潟へ出る。
神奈川県三浦市の相模湾側に面した小網代の森には、約2,000種の生き物が生息する貴重な自然環境が残されている。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
近場で撮影場所を考えていたら、三浦半島の西南部の相模湾側に面した小網代の森が思い浮かんだ。森について調べると、面積約70haの森は、浦の川(うらのかわ)の源流から、森、湿地、干潟、海まで、人工物に遮られず、連続して残されている集水域で、貴重な自然環境が残されていることを知った。中でも干潟で見られる小さなカニに特に興味を持ち、5月の第4金曜日の午後、車で森へ向かった。森の玄関口・「引橋入口」の近くにある複合商業施設のベイシア2階には、「小網代の森インフォメーションスペース」があり、駐車場も営業時間内なら利用できるので、そこに車を停めた。森の入口からよく整備された木道を「中央の谷」と名付けられた谷へ下り歩き、浦の川に沿って湿地を抜けると潮の香りがする干潟が見えてきた。干潟に到着した時刻は潮が満ち始め、目当てのカニを撮影するには少し遅かった。翌日の土曜日、干潮時に干潟へ再び出かけたが、休日のため人出が多く、2日後の月曜も干潟へ行くことになった。
湿地を通り抜ける木道脇に、ツタの葉が絡みつく一本の木が立っていた。
森は新緑が美しかったが、相模湾からの潮の香り漂う湿地も緑が濃かった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
川沿いで見かけたニホンカワトンボ。
木道から離れていたので、望遠ズームでトンボの正面から撮影。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemorary
1cmほどの小さなカニが、巣穴から出てくるところを待ち構えて撮影。
もう少しでレンズフードがカニに触れる距離だった。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
トルコ石のような水色の顔で、白いハサミを上げ下げしてダンスをするチゴカニのオス。
ダンスは、メスへの求愛のため、又は、なわばりを主張するためとも考えられている。クロップズーム設定を2倍にして撮影。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art
抱き合うコメツキガニを上から撮影。
少しでも動くと逃げてしまうので、身を潜めるようにして撮影した。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art
潮が引いた岩の下にいたアカテガニ。小網代の森といえば「アカテガニ」だそうだが、見かけたのは3日間で一度だけだった。
カメラと肘を砂地に付けた撮影だったが、チルトが出来る電子ビューファインダーEVF-11を活かし何とか撮れた。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art
動きが速いコメツキガニが止まった瞬間、目にフォーカスした。
この写真も砂地にカメラと肘を付け、電子ビューファインダーEVF-11をチルトさせて撮影。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art
干潟は人の姿が見える付近以外、現在は立ち入ることは出来ない。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
小網代の森の南、「宮の前峠入り口」の少し西に位置する白髭神社に立ち寄った。
社殿の左手にあり、叩くとキーンという金属音のする鳴石、別名「カンカン石」と呼ばれる石にレンズを向けた。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
航海安全、大漁の神として古から崇拝されていた白髭神社の大きな貝殻の手水場。
湾沿いにある神社らしい。
【使用機材】SIGMA fp, SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
河口の干潟は潮が満ちてくると様子が一変する。
【使用機材】SIGMA fp L, SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
散策路を歩き、干潟ではカニを撮影した。
小網代の森へは3回通った。2日目に撮影出来たアカテガニは、カニとしては珍しく森に暮らし、夏の大潮の晩に母ガニは海岸へ移動し、お腹に抱えた幼生(ゾエア)を海に放す。これは産卵ではなく、放仔(ほうし)というそうだ。幼生は3、4週間ほど海で成長し、生き残った幼生は海岸へ戻り陸に上がる。かつて小網代の森には、ゴルフ場などの大規模な開発計画があったが、様々な保全運動により貴重な自然環境が残されたのは有り難いことだ。「引橋入口」から小網代湾までは片道1.6kmの距離で、散策路は木道も含めよく整備され、小さな子供も難なく歩ける。夜間は立ち入り禁止だが、昼間は一般に公開されているので、近くに来ることがあれば立ち寄ってみてはいかがだろうか。小さなカニを撮るのなら、今回私が多用したSIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art、近づけるSIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryもお勧めだ。