押本龍一－私の出会う光景－第88回：オレゴン州シスターズ（Sisters）周辺

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

オレゴン州のスリー・シスターズ（Three Sisters）と呼ばれる標高3,000mを越す3つの山を背景にした広大な農場に、1台の古いトラックが置き去りにされたようにポツンと停まっていた。私は夏の陽射しが照りつける農場地帯の光景を高画質なセンサーに焼き付けた。

7月中旬、私はオレゴン州の街ユージーン（Eugene）の東、カスケード山脈（Cascade Range）を流れるマッケンジー川（McKenzie River）沿いのコテージに宿泊した。ウィラメッテ国立森林公園（Willamette National Forest）にあるクリヤー湖（Clear Lake）から、オレゴン州西部に流れる川沿いの夜は涼しい風が吹き快適だった。

カスケード山脈の森の中を流れる長さ90マイル (145 km)のマッケンジー川の朝。

翌朝、マッケンジー川に別れを告げ、冬は通行止めになるオレゴン・ルート（Oregon Route）242を東へ向った。カスケード山脈の深い森の中を行くと道沿いに数台の車が停まり、プロキシの滝（Proxy Falls）へ繋がるトレイル入り口のサインが立っている。私は車を停め、カメラバックを背負いトレールを歩いた。森を歩いて行くと覆っていた樹林が少なくなって青い空が広がり、大きな溶岩がゴロゴロした火山活動の跡がリアルに迫まってくる。

樹木が覆い茂る道沿いからトレールを歩く。

溶岩の間から逞しく木が生えているトレイルを歩く。

苔に覆われた溶岩と森。

溶岩に覆われたトレイルを歩き、陽が届かない森の中に再び入り下り、オレゴン州で最もフォトジェニックな滝のひとつであるプロキシの滝にたどり着く。垂直に近く流れ落ちる滝とは違い、急斜面をクリークが流れていくようなプロキシの滝は、滝からクリークになる付近では穏やな空気感が漂っていたが、滝の横から上に登っていくと流れ落ちる水の激しさは増し滝の迫力を感じた。

陽光は、滝の裏から差し込むように流れ落ちる水を描写し、滝の存在感を強める。

高さ70m近くの滝の横を登り、約半分の高さ付近から撮影。木の枝を掴み、苔が生えた足場の悪い場所からシャッターを押す。

滝からクリークとなる部分は静かで、2人の若い女性が清らかな水場を楽しんでいた。

プロキシの滝からさらにオレゴン・ルート242をさらに東へ走ると、森から一転して黒い溶岩に覆われた風景が広がっている。

360度溶岩に覆われている地帯と青空。

黒い溶岩地帯に立っていた1本の枯れた木が、生きている木より目を引く。モノクロにして、枯れた木と溶岩の世界を強調してみた。

溶岩で造られたディー・ライト展望台（Dee Wright Observatory）。

展望台から南の方角には、3つの火山から成るスリー・シスターズのノース・シスター（左）とミドル・シスター（右）の雄大な姿が見えるが、サウス・シスターは見えない。

ディーライト天文台の溶岩チューブの中から標高3,199mのジェファーソン山（Mount Jefferson）が見える。

ディーライト展望台から東へ1,000mほど行くと森の中に入り、シスターズ（Sisters）という町を通過してさらに東へ走る。広大な農場が広がり、南西方向には雪を被ったスリー・シスターズ（Three Sisters）と呼ばれる山がクリヤーに見えるオレゴン州の内陸部の夏は、強い日差しが照りつけ全てが眩しく光って見えた。

溶岩地帯から森林地帯に入ると木々の間を少し歩いた。ディーライト展望台のすぐ側を、ロングトレイルであるパシフィック・クレスト・トレイル（Pacific Crest Trail）が通っている。

右からノース・シスター（標高3,074m）、ミドル・シスター（標高3,062m）、サウス・シスター（3,074m）。ノース・シスターはスリー・シスターズの中で最も古く、サウス・シスターは最も若い山である。

広大な農場と牧場があり、遠くには雪を被ったジェファーソン山が見える。

オレゴン州中部の農場を走り、スポーツとしてのクライミングの発祥の地といわれ、1,000以上のクライミング・ルートがあるスミスロック州立公園（Smith Rock State Park）へ向った。州立公園に到着した時刻は、凝灰岩と玄武岩から成る切り立った崖は夕方の陽の光に染まり始め、乾いた地面にできた自分の影が長く伸びていた。駐車場から周囲を眺めていると人の声が響いてくる。クライマーだと思い近づいてみると救助隊の訓練が行われていて、足を滑らせて落ちたら命を落しそうな場所だった。

救助隊の訓練が行われていたスミスロック州立公園。

崖の上からクルックド川（Crooked River）を見下ろす。

クルックド川にボートを運ぶ人。

夏の強い陽射しを避けて登るクライマーを大口径ズームレンズで捉えると、クライミング道具の細かいディテールも読み取れるシャープな画像が残されていた。

陽が傾き気温が下がり始めると、地元の若い人が岩壁を目指し集まって来る。

オレゴン州中央部のスミスロック州立公園は、強い日差しが照りつけ乾燥した地面も熱くなっていたが、陽が落ちかけると暑さは和らいだ。私は岩壁に別れを告げ、宿を探しにこの辺りで一番大きな街ベンド（Bend）に向かった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。