押本龍一－私の出会う光景－第92回：ビショップ（Bishop）周辺の秋

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

馬と羊が放牧されている牧場に、葉を黄色にした1本の木が朝陽を浴びて輝いていた。高画質なコンパクトカメラでゆっくりと構図を決めて秋の光景を切りとると、澄み切った空にシャッター音が吸い込まれていった。

10月初旬、陽が昇る前にオーエンズ・ヴァレー（Owens Valley）に入り、USルート395号を北上した。南北に約120kmに渡り細長く伸びている大きな谷は、西はシエラネバダ山脈、東はインヨ山地とホワイト山地が連なり、谷を挟んだ山脈には標高4,000m以上の峰が聳えている。夏場の昼間は摂氏40度近くになる日も多いが、この朝は冷え込み暖房を入れた車の中で日の出を迎えた。

シエラネバダ山脈とオーエンズ・ヴァレーの小山に朝陽が届き始めるが、この後しばらく太陽は雲に隠れてしまった。

オーエンズ・ヴァレーの日の出は高い山がブロックしてただでさえ遅いが、この朝は山の上に雲が覆い、ヴァレーに陽の光がなかなか届かなかった。予報ではこの日は晴れて翌日から天気は崩れるので、この日は晴れてもらわないと困る私は、太陽を待ちわびながら走行した。オーエンズ・ヴァレーの北端の町ビショップに到着すると黄色に紅葉した木々が朝陽に美しく輝き、私の心配は雲と共にどこか消え去り、秋晴れの一日となった。

ビショップの牧場にポツンと立つ1本の木が見事に紅葉していた。

標高1,260mのビショップの町で朝食を取った後、ビショップ・クリーク沿いの州道168号を南東へ走った。州道はシエラネバダ山脈を急激に上って行き、標高が高くなるにつれてクリーク沿いには紅葉した木の数が多くなり、標高2,500mのダムでせき止められた湖まで上ると紅葉はピークだった。

紅葉したアスペンツリーが湖に映り込み、釣りを楽しむ人々の声が響いていた。

シエラネバダ山脈の東側であるイースタン・シエラ（Eastern Sierra）を水源とするビショップ・クリーク。標高2,500m付近の紅葉はピークだった。

秋晴れの日、ほぼ全ての葉が黄色になったアスペンツリーを見上げる。風で葉が揺れていたので早めのシャッタースピードで撮影。

同じ山間に、これから紅葉する緑のアスペン、紅葉が盛りのアスペン、紅葉が終わり葉を落としたアスペンが見える。

冬は通行止めになる州道まで上り、標高2,850mのノース・レイクに到着する紅葉はピークを過ぎていた。湖までのアクセスはオープンしていたが、「連邦政府予算の失効により、この施設は現在閉鎖されている」と書かれた紙があちらこちらに張られてあり、トイレは閉まり西の奥へ行く道も閉まっていた。カリフォルニアの国立公園が閉まっていることは知っていたが、森林公園にも影響が出ていたのには予想外だった。

ピークを過ぎた紅葉がノース・レイクに映り込む。

湖畔沿いのダート道に、まだ紅葉がピークのアスペンツリーも少し見かけた。

ここからは管理局が休業中のためアクセス禁止だったが、気にせず歩いて行くカップル。

連邦政府予算の失効にも影響されず、釣りを楽しむ人が多かったノース・レイクから州道に引き返すと、高く昇った太陽光でビショップ・クリークの全貌がよく見え、地形が理解できた。

ビショップ・クリークを見下ろす。アスペンツリーが集中して生息しているところにクリークが流れていることが多い。

ビショップ・クリークが流れる谷の上部から、オーエンズ・ヴァレーを見下ろす。

ゴロゴロした岩と紅葉したアスペンは、秋のイースタン・シエラには欠かせない光景だ。

オーエンズ・ヴァレーまで下りてくると気温がだいぶ上がり、ジャケットを脱いで半袖になった。ビショップの町でランチブレイクを取った後、USルート395号を38kmほど北上し、ロック・クリーク・ロードに入りイースタン・シエラを再び上った。この道は南に向ってかなりの標高差を上るので、紅葉がピークに達している標高まで上ればベストな紅葉に出会えると思ったのだが、紅葉はかなりの標高差に渡って見ることができ、標高約2,930mにあるロック・クリーク・レイクまで上がっても紅葉はピークに見えた。