第102回:Devil's Punchbowl(デビルズパンチボール)周辺の春
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第102回:Devil's Punchbowl(デビルズパンチボール)周辺の春

サンガブリエル山脈(San Gabriel Mountains)から流れ込んだ大量の水により、長い時間をかけて深く刻まれた渓谷を歩く。傾いて上に突き出した砂岩の渓谷周辺は、デビルズパンチボール・カウンティーパークに指定され、訪れる人々は吸い込まれるように渓谷へ下ってゆく。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:17 mm

3月下旬、サンガブリエル山脈の西端から山脈の北へ出て、昇ったばかりのまぶしい太陽に向って州道138号線を東へ進む。小さな集落が点在する砂漠地帯の朝は冷え込み、暖房を入れて走る。大きな鉄塔が遠くまで建ち並ぶ高圧線の下を通り抜けて300mほど走ると、高圧線が朝陽に光る光景をもう一度見たくなり、通り過ぎた高圧線の下まで引き返した、2列になって伸びている高圧線の間にはダート道があり、私はその道をゆっくり走ってみた。

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高圧線がどこまでも続いているように見える光景を、超望遠ズームレンズを最長に伸ばして撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:500 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.82 MB

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鉄塔にかかる小さなサインが目を引く。大口径標準ズームレンズでサインにフォーカスした画像には、肉眼で認識できなかった小さな文字が写り出されている。後方に見える山々はサンガブリエル山脈。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:49 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:7.78 MB

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ダート道にクレーターのように盛り上がったアリの巣を幾つも見かけた。大口径望遠マクロレンズを巣に向け、巣の出入り口付近にフォーカスする。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:180 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.17 MB

高圧線から離れ州道138号線をさらに東へ走り、サンガブリエル山脈に向うローカルな道を南に走る。サンガブリエル山脈は、標高3,069 mのマウント・サンアントニオ(Mount San Antonio)を最高峰に、東西に約110 km、南北に36 kmに連なり、ロサンゼルス群北部とサンバーナーディーノ(San Bernardino)群西部に位置している。私はサンガブリエル山脈の南側を歩いたことはあったが、山脈の北側に来たことはなかった。うねった丘を走り、高い山の上にまだ雪が少し見える山脈に向って走って行き、カリフォルニア州南部から西部にかけて約1,300kmにわたって続くサンアンドレアス断層(San Andreas Fault)を横切る。

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サンガブリエル山脈の北側は、この辺りから地表がうねり道路も急カーブしていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:21 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.76 MB

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地図上ではまだ山岳地帯ではないが、サンガブリエル山脈の麓に入り込んだ感じがする付近からモハベェ砂漠へと続く平野部を眺める。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.74 MB

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断層の上に立ってサインボードをよく見ると、断層の意味であるFaultの文字が上下に少しずつ断層のようにずらしてあった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.49 MB

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丘に上り断層が走っているくぼ地を見る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:12 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.86 MB

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これほど密集して生息するジョシュアツリーは見たことがなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.59 MB

サンガブリエル山脈へ向って走って行くと道は行き止まり、エンジェルス国立森林公園内に含まれるデビルズパンチボール・カウンティーパークにたどり着く。カメラバックを背負い、月曜日で休館だった小さなビジターセンターの横、海抜約1,445m地点からトレイルを歩き始める。巨大断層が近くに走る砂岩の風景はドラマチックで、その場にいるだけで地球の奥深い部分からエネルギーが体に伝わってくる。

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傾きながら上に押し上げられたように見える岩が重なり合う風景は圧巻だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:31 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.23 MB

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ビジターセンター付近から見る砂岩の渓谷とサンガブリエル山脈

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:21 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.66 MB

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花の季節には少し早いと思ったが、黄色い花が咲いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:180 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.83 MB

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砂岩の堆積によって形成されたパーク内のトレイルは変化に富んでいる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:17 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:15.85 MB

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強い陽光を受ける枯れたユッカは強い存在感があった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:180 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:9.14 MB

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しっぽの先が切れたトカゲを岩の上に発見し、すばやく大口径望遠マクロレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:180 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.73 MB

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水の流れる音は岩に反射して聞こえてきた。音を聞いてイメージしたクリークの水量は、近くに行ってみると意外に少なかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:17 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.18 MB

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サンガブリエル山脈を水源とするクリーク。クリークに転がる岩と後方の空に向って突き出した岩は、動かないが生きているように感じた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:17 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:8.94 MB

渓谷の底まで下りクリークで一休みした後、再びトレイルを歩き始める。渓谷の底から急な上りを息を切らして登ると額から流れ落ちた汗が眼に入る。ビジターセンターに戻ると、朝は2台の車しか見なかった駐車場には10台ほどの車が停まっていた。私はカウンティーパークを後にし、エンジェルス国立森林公園の外に出てから、断層を示すサインボードが立つ道に入り東へ向かった。道沿いのクリークにはほとんど水の流れはなかったが、クリーク沿いには草木が茂り、鳥の鳴き声があちらこちらから聞こえていた。道は南北に伸びる道に突き当たり、山から流れてきたクリークが走って来た道沿いを流れるクリークに注ぎ込み、集落が存在するには最適な場所に思えた。

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保存されたように壁がきれいに残されている廃虚。2つのクリークが合流する周辺は集落があったようだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.71 MB

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キツツキが、樹をコンコン打つ音が響いていた。ハシボソキツツキ(Northern flicker)だろうか?

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:439 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.42 MB

写真を撮るため外したサングラスがどこかに落ちてしまい、強い陽射しに疲れてきた眼を半分閉じながら山から流れてくるクリーク沿いの道を南へ進んだ。上の方にうっすらと雪が被るサンガブリエル山脈が近づいてきて、エンジェルス国立森林公園内に再び入ると小さなキャンプ場があり、数個のテントが張られている。私は水がほとんどないクリークの川原に出て後、道をさらに南へ進んだが、道はゲートに閉ざされていた。海抜1546m、気温36℃と腕時計が示す場所から、私は上って来た道を引き返した。

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サングラスがないと非常にまぶしい午後の川原だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:25 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.42 MB

国立森林公園の外に出て少し走ると小さな郵便局があり、木陰に車を停めてスナックを食べていると、郵便局の後方にある池からカモが私に近づいて来た。無人の郵便局に郵便物を取りに来る人々から餌をもらっているのだろうか、とてもフレンドリーなカモ達だった。

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足早に私に近づいて来たカモ達を大口径標準ズームレンズで捉える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:37 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:11.78 MB

カウンティーパークの公式ページによると、約6000万年前、いくつかの断層が作用し合い形成されたデビルズパンチボール・カウンティーパーク周辺は浅い海の底だった。そして、圧縮、ねじれ、褶曲、折り畳むといった言葉を使い、デビルズパンチボール・カウンティーパーク周辺が形成された様子を説明している。最近LA周辺で地震があり、我が家も横に大きく揺れた。ちょうどデビルズパンチボール周辺の写真を編集している最中だったので、常に活動している地球のエネルギーを肌で感じた揺れだった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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