シグブラ
第27回:青春18きっぷで東海地方ブラブラ

青春18きっぷで東海地方ブラブラ

March 12, 2014

春の「青春18きっぷ」シーズンがやってきた。早速JR窓口できっぷを購入し、ぽっかりと時間が空いたウィークデイに、ブラリと行き先を決めずに列車に乗り込んだ。春の気配を感じたかったので、東京駅から東海道線で西を目指した。

17時に雨の東京駅を出て、熱海で乗り換え掛川に到着したのは21時過ぎだった。そのまま駅前の宿に飛び込み、晩ご飯がてら近場のワインバーで情報収集。平日ということもありバーは貸し切り状態。飲みながらマスターから濃い地元の話を聞いた。
翌朝はきれいに晴れ渡りブラブラ日和となった。まずは高いところから街のイメージを掴むために掛川城に登る。端正な造りの天守閣から東海道新幹線と在来線がよく見えた。

城郭は春の暖かな空気が流れていた。聞こえるのは鳥の声と、遠くから風に乗ってくる列車の音だけ。お城を見に来る人も少なく、のんびりと歩いてSIGMA DP2 Merrillで撮影を愉しむ。苔むした庭園に舞う梅の花びらが美しい。

行き先をしっかりと決めない青春18きっぷの旅は楽しい。臨機応変に気の向くまま、車窓から見えた景色を撮りにブラリと列車を降り、懐かしい雰囲気の路地を歩いたり、歴史のある建物を巡ったり、土地のうまいものを食べる。次に乗る列車の時刻が気になったり、宿を確保したくなったらポケットからiPhoneを出せばいい。道に迷ったときもそうだ。

お城を十分堪能したので駅方面に下ることにした。途中小学校の横を通り過ぎたが、土の広いグランドが素晴らしいと思った。自分が卒業した渋谷区の小学校は特殊舗装のグランドで、斜めに50メートルのレーンを確保するのが精一杯だったからだ。サッカーゴールがいくつも設置されているのが静岡県らしい。

風情のある東海道掛川七曲がりをグネグネと歩き掛川駅に到着した。同駅から出ている天竜浜名湖線も気になったが、青春18きっぷでは乗車できないので諦める。改札上の電光掲示板に「岐阜」行きの表示を発見。時間もちょうどいいのでこれに乗ることにした。結局この日は名古屋で下車し、地元の知人たちに歓迎してもらった。

3日目は朝の通勤時間前に名古屋を脱出して中津川に向かう。中山道の宿場町・馬籠に久々に行ってみたくなったからだ。撮影後はそのまま長野方面に向かって東京に帰ることにしよう。名古屋から人もまばらな車両のロングシートに腰掛ける。眩しい朝日とシートヒーターの暖かさ、そして心地よい列車の揺れで眠気が襲ってきた。ウトウトしていると中津川駅に到着。そこからバスに30分ほど乗り馬籠に着いた。石畳のなだらかな旧街道を登りながら、いにしえの街を撮影する。

馬籠峠付近はかなりの積雪で越えるのに難儀した。転倒しないようにとようやく山道を下っていくと、木曽でも江戸時代の情緒を色濃く残している妻籠に到着だ。軒を連ねる旅籠が実に画になる。途中オーストラリアから単独で観光に来ていた少女と一緒になった。彼女は生まれて初めて雪を見たそうで、とても喜んでいたのが印象的だった。

妻籠は実に魅力的だ。旅館の食堂で岩魚定食を食べ、路地を一本一本歩いて回った。ずっと撮影していたかったが、乗車できるのがほぼ各駅停車のみとなる青春18きっぷの「最終電車」は早い。そろそろ南木曽駅に移動して列車に乗らないと今晩中に東京に帰り着けないのだ。オーストラリアの彼女は名古屋方面に向かうとのことで一緒のバスで駅まで行くことにした。バス待ちの間、一昨年撮影で行ったオーストラリアのパースやシドニーの話で盛り上がった。南木曽駅に到着すると、自分が乗るちょうど松本行きの列車が入線してくる時間であった。名残惜しいがお別れだ。反対方向ホームで列車を待つ彼女に「サヨナラ!」と手を振る。動き出した列車のボックスシートに身を収めて外を見ると小雪が舞ってきた。手元の青春18きっぷは残り2回乗車できる。さて次回はどこをブラブラしようか。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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